昨年、古い中古のマンションを買ったことは以前に書いたが(「私の格付け 投資不適格」ご参照)、その際に火災保険への加入を求められ、30年分の保険料を一括で支払った。これだけ長期の保険料を一括して払うと、保険というサービスの利用料金を払っているというよりは、なんだかひとつの高額の「商品」を購入している、という感覚を覚える。
これに対して、生命保険は月1~2万円の保険料を払うわけだが、「まぁ、そんなもんかな」とつい油断してしまい、全体の「値段」を意識することがない。生保は長期の契約なので、これを10年間払い続けると120万円~240万円、20年間だったらを240万円~480万円も払うことになる。「住宅に次いで高い買い物」(最近は、ケータイ料金の方が高いそうですが)と呼ばれる所以だが、総支払金額はなかなか意識しないのでは。
このように分割払いとすることは、加入者/購入者にとっては、出費を平準化できるというメリットがあるが、心理的には「それほど多く払ってない」と錯覚させるデメリットがあるように、いいことばかりではなく、弊害もあるのではないか、というのが本エントリーの問題意識。
そもそも、生命保険の保険料払いというものを、どう位置づけるべきか。
たとえば、生命保険を住宅の家賃とか、スポーツジムの会費のように、「期間に対応したサービス」と考えるならば、ある期間の総支払額がいくらになるか、ということは、ことさらに意味がないかもしれない。サービスが不要になったら乗り換える、というだけこのこと。
これに対して、冒頭の例のように、「●年間」と性能が定義された保障機能を一括して購入していると考えると、この総支払額こそが商品の価格であり、買う時点から意識すべき必要がある。そうすれば、自分がいくら払っているのか、自分が払ってもいいと考える価格に見合う機能は何か、慎重に検討するきっかけとなる。
たとえば住宅ローンのように、3000万円のマンションをローンを組んで買って、分割して返済していくという買い物であれば、「毎月10万円の買い物」という感覚ではなく、購入時点で明らかに総額は意識した上で、その価値に見合った物件であるか否かを精査して選ぶだろう。
同様に、生保も、「まぁ月1万だからなぁ」と考えるのと、「20年間の保障を480万円で買っている」と考えるのでは、まったく違う選び方をするのではないか。どちらが正しい/間違っているというわけでなく、複眼的な視点でみることが、よりよい意思決定に繋がる。まずは月の支払い保険料を12倍して、30倍してみることで、自分が本当に何を買っているのか、見直してみることが、きっと有用なはずだ。
>どちらが正しい/間違っているというわけでなく、複眼的な視点でみることが、よりよい意思決定に繋がる。
たしかにそうですね。2~3ヶ月前から生命保険会社で働き始めて生保について学んでいる最中なので 興味深く読ませていただきました。
私も御社の商品リリースを楽しみに待っています!
投稿情報: ビーグル | 2008年4 月29日 (火) 04:11
岩瀬さん、こんにちは^^
遅まきながら先日は有難うございました。
>どちらが正しい/間違っているというわけでなく、複眼的な視点でみることが、よりよい意思決定に繋がる。
おっしゃる通りだと思います。
>「20年間の保障を480万円で買っている」
という感覚がお客様サイドに希薄なのは、「生命保険は見直しすべきもの」というイメージによる影響も大きいのではないでしょうか?
例えば住宅の場合で考えてみると、確かに持ち家の方の場合は「いくらの物件を買う(その上でローンで返済をしていく)」という意識が強いと思います。これは持ち家の場合には、購入・売却を繰り返すものではなく基本的に一生保有する(本当は購入・売却を繰り返してもいいのでしょうが、税金と手数料でやられてしまいますもんね)という前提に立っているからだと思います。
一方で私自身は賃貸ですが、毎月の家賃がいくらという発想はあっても、もう3万円安いところに住めば「10年住んだら360万円も安いんだよ!」という感覚は正直なところありません。
この3万円の家賃の差が毎月のキャッシュフローにどう影響を与えるかは契約時にはもちろん考えますが。。。
つまり生命保険においても、その当初の契約期間を全うする買い物だということであれば、人間はそういった発想になるんじゃないだろうかと思います。
もちろん、家族状況の変化や新商品の登場などあるんでしょうけど、僕自身は基本的に生命保険とはきちんとしたもの(この「きちんとしたもの」はアナログ的ですが、一番重要)に加入し、見直しは最低限にするという形がお客様に一番メリットがあると考えてます。
そんなことから、(予定利率が今後大幅上昇しない限り)買い切り予定の終身、養老、年金系は年払・前納等を駆使してトータル負担を引き下げる、定期は月払でコストとして割り切るという形が理想ではないかという思想を持っています。
医療保険は・・・(僕は要りませんが)必要な方にとっては一番商品が進歩する可能性はある分野ですから、やはり月払のコスト認識が合ってる気がします。
最後に、御社の商品リリースを楽しみに待っています。
頑張ってください!
投稿情報: 通りすがりの外資生保 | 2008年4 月26日 (土) 12:38
生命保険は、支払期間が不定(基本的に死ぬまで)なために、コスト感覚が曖昧になりますよね。
間違いなく30年支払うのだったら、おそらく生命保険に入らない方が得という結論になりそうです。
投稿情報: nomushun | 2008年4 月25日 (金) 14:54