これができたら自分はもっと幸せになれるのな、と思うことが、二つある:
1) 「慣れず、飽きず」に、毎回、新鮮な感動を持ち続けられること
2) 他人と比較せずに、自分だけの評価軸で判断すること
前者については、冬のボストンで寒さに震えながら、日本を恋しく思っていたことを思い出す。浅い湯船になかなかたまらないぬるいお湯に入りながら、あふれんばかりのたっぷりの熱いお湯いに入れたら、どれだけ幸せなことか!と考えたことを。そして、学校のカフェテリアでさして美味しくないアメリカンランチを食べながら、千円以下で暖かいみそ汁と小鉢、煮魚定食が食べられる日本の昼食が、どれだけ素晴らしいか!を。
遠く日本の日常を恋しく思いだしながら過ごしていた日々を思い出すと、すでに上記二つが当たり前の日常になってしまい、感動する心すら失ってしまったことを悲しく思う。帰国直後の喜びを今でも維持できたいたら、どれだけ毎日のお昼ご飯が、そして夜のバスタイムが、彩り豊かなものになることか!
後者については、HBSの卒業式で学生代表スピーチを務めた仲間も語っていた。周囲の人よりももっと早く出世したいとか、同じくらい報酬を稼ぎたいとか、そういう相対的な評価は辞めて、自分だけの絶対的な価値観と軸で足ることを知ることができたら、どれだけ我々は幸せになれるか、ということを。
そもそも留学生活自体が、そのような相対評価からの脱却を教えてくれたはずだ。MBAは学生のスタートラインがある程度均質的な義務教育とは異なり、それぞれの年齢と経験、バックグラウンドが大きく異なる。同級生には35歳の医者と、21歳の大学卒業直後の若者がいた。彼らに対しては何かを「教える」のではなく、各人がそれぞれ何かを感じ取り、昨日の自分よりも少しだけ強くなっていく、あくまでもそういう場なのだ。
それは例えるならば、フィットネスジム通いに似ている。隣で走っている人がどれだけ早く走れるかは、関係ない。あるいは、向こうにいる人がどれだけ重いウェイトを持ち上げているかも、関係ない。あくまでも少しずつではあるし、目に見える形にはならないかも知れないが、昨日の自分よりも、ちょっとだけ強くなっていれば、いいはずなのだ。そのトレーニングを2年間繰り返すことで、気がついたらはじめた頃の自分とはガラッと変わっているのだから。
いつまでも新鮮な気持ちで感動し続けられる感性。他人との比較を辞めて、自分の中だけの絶対的な価値観で充足感を感じられるようになること。意識してもなかなかできないが、これらを問い続けることで、内なる豊かさと、どこか心の安らぎを手に入れることができるように思う。
以上、「超凡思考」1-1、「他人と比較しない」の補足です。
>周囲の人よりももっと早く出世したいとか、同じくらい報酬を稼ぎたいとか、そういう相対的な評価は辞めて、自分だけの絶対的な価値観と軸で足ることを知ることができたら、どれだけ我々は幸せになれるか、ということを。
本当にそう思うんですが、留学生活が相対評価からの脱却を教えてくれたかというと、疑問ですねー
『ハーバードからの贈り物』というHBSで最後の授業で教授が学生に送る話を集めた本があるのですが、その中の「MBAの同窓会」という話が好きです(余りにも深く納得したのでブログにも書いてしまいました)。
http://www.ladolcevita.jp/blog/global/2008/06/mba.php
「自分の実績と収入を、自分自身の目標や成功の基準ではなく、同級生の実績や収入と比較することになる」から5年目の同窓会に行くのはやめなさい、という内容。
私、今年5年目の同窓会なので、これを読んで真剣に考えました。
昨今の環境下「他人と比較することは意味がない」と思う人が増えているとは思いますが。
投稿情報: la dolce vita | 2009年2 月11日 (水) 21:21
伊藤先生が今もよくおっしゃてる事ですが、難しいですよね(苦笑)
僕は、完全には無理でも、「人は人、自分は自分」って思うだけで、ある程度比較の呪縛から逃れられればいいかな~と、最近は思ってます。
投稿情報: 大学生F | 2009年2 月10日 (火) 22:52
このエントリ、ものすごく納得してしまいました。
Philipさんの著書 Ahead of the Curveをちょうど読んだタイミングということもあり、それはHBSにいこうが、どこにいようが
相対評価にとらわれてしまうと苦しくなってしまうことが多いと同時に幸せになるのがとても難しくなってしまうということなのだと思います。
特に私自身も日本にいるとアメリカに住んでいた時と比べて相対的な評価や価値観にとらわれがちですが、自分自身の軸というか岩瀬さんの言葉をお借りするのであればPrincipleやValueを大切にしたいなと改めて思いました。
投稿情報: 東洋 | 2009年2 月10日 (火) 16:12