少し前になるが、11月28日(金)の経済教室「比較サイト普及とネット上での価格形成」は興味深かった。価格コムが提供したデータを一橋大学の先生方が分析をし、店舗間の価格差がどのようにクリック率に影響するか、ということを調べている。
まず明らかになったのが、①1位と2位の価格差が数円しかなくとも、上位表示か否かでクリック率に2倍の開きがあることと、②1位の店舗でもクリック率は70~80%であり、2位は10~20%はあること。
ネットビジネスをやっている人であれば「まぁそうだろうな」という結果だが、理論的には「情報が完全に提供されれば、一番価格が安い店に集中し、価格がすべて収れんする」といった風にも考えられたため、やはり価格以外の要素も購買決定にはあるよね、ということが実証的にも証明されたことになる。
本論文では「通常の取引と同様にひいきといった泥臭い部分が重要な役割を果たしているのかもしれない」という仮説を述べているが、価格コムを使って家電など買い物をした経験を思い起こすと、ひいき云々よりも、価格が一位だった秋葉原の問屋が、支払でクレジットカードを受けつけていないとか、配送料が高いとかいったことが理由で、二位以下のお店を選んだ覚えがある。したがって、価格以外にも購買の意思決定に影響を与える経済的条件もあって、そちらが大きな影響を与えているような気がする。
次に明らかになったのが、店舗が競合や消費者の動向を見ながら頻繁かつ大幅に価格を変更しているということ。つまり、生産者が決めた価格とは別の流通レベルで、大きな価格変動が起きていること。これは極端にいえば「インフレでもデフレでも企業の生産行動や雇用は不偏」ということになるから、金融政策があまり意味を持たないことになる、と説明している。
実際には多くの業界でメーカー希望価格と小売実勢価格の間には開きがあり、後者は当然「仕入値+マークアップ」という点で前者のしばりを受けるし、前者は流通からのプレッシャーで値下げを余儀なくされることもあるので、いずれもお互いに影響を及ぼしあっている気がするのですが。
いずれにせよ、ネットビジネスのデータがアカデミックに分析されている例はあまりみたことがなかったので、とても興味深かったです。
いきなりですが「不安産業」という言葉から想像されるものについて色々語って欲しいです。
投稿情報: sun | 2008年12 月 5日 (金) 18:08
ネットオークションも含めてネットで買う場合の送料は重要ですね。送料がバカ高いところからは買う気がしません。
投稿情報: passer-by | 2008年12 月 5日 (金) 09:54