金融庁は3日、生命保険会社10社に対して、保険金の不払い問題で業務改善命令を出した。保険会社側はこれを受けて、再発防止策としてさまざまな管理態勢の整備に努めている。私たちも、過去の事例から学ぶべきことは学び、万全の態勢で臨みたいと考えている。
さて、「不払い」と聞くと、何か保険会社側が支払うべきであったのに支払を拒否したケースを想起させられる。しかし、今回の調査対象となったのは、このような「不適切な不払い」とは異なる、「支払漏れ」「請求漏れ」の類型である。
このような「漏れ」を防ぐために保険会社ができることをすべきであることは言うまでもない。だが、保険会社側だけの努力だけでは、限界があるかもしれない。将来の不払いを防ぐためには、加入者側も(普通の買い物をするときのような)注意を払い、自らを守るための策を講じる必要があるのではないか。
以下では、金融庁が公表した調査結果に基づき、どのようにして今回の「不払い」が発生したのかを振り返り、もって皆さんが「不払い」にあわないために、できることを考えてみたい。(なお、業界では死亡保険は「保険金」、医療保険は「給付金」と呼ぶが、いちいち保険金「等」とつけるのがわずらわしいので、以下では両者を併せて「保険金」と表記する。)
もちろん、本ブログの性質上、最終的には若干のポジショントークが入る可能性があることはお許し頂きたい。
● 類型1: 保険金の請求案内漏れ(約45万件、約705億円)
一件当たりの金額がもっとも大きいのがこの類型。一件あたり、平均約15万円。診断書を見れば、請求を受けた保険金以外にも支払える可能性があったにもかかわらず、その案内が行われず、結果的に他の保険金が支払われなかったもの。
金額ベースで特に多いのが、以下のもの:
① 三大疾病保険金(45%)
② 高度障害保険金(21%)
③ 通院給付金+入院給付金(17%)
例えば、三大疾病(がん、心筋梗塞、脳卒中)を患った契約者に対して、主契約たる入院給付金は支払っていたが、三大疾病については特に請求がなく、会社側も請求可能である旨の案内をしなかったため、三大疾病保険金が支払われなかった、というもの。発生率は7%というから、極めて高い。
● 類型2: 保険金の支払漏れ(約9.7万件、約92億円)
次がこのタイプ。一件当たり、平均約10万円。診断書に記載された入院、手術に関する情報を見落としたり、見誤ったことなどにより、本来支払われるべき保険金が支払われなかったもの。
金額ベースで多いのは、以下のもの:
① 手術給付金(50%)
② 入院給付金(22%)
例えば、診断書に手術の記載が「手術欄」ではなく、「病状等の経過欄」に記載があったため、手術名を見落として手術給付金を支払っていなかった事例や、入院期間を見誤って支払金額が不足した事例。
● 類型3: 失効返戻金の案内不足(約80万件、約175億円)
最後がこのタイプ。全体の金額は大きいが、一件当たりは平均約2万円なので、前の二つと比べると小粒。これは、保険料を滞納して契約が失効した場合に、請求がなかったために払わなかったものや、遅延利息の計算を間違えて過小に支払ったもの。
● 保険契約者が取るべき自衛策: 単品主義のススメ
第三の類型については、すでに各社とも自動返金ができるような措置を講じようとしている。ただ、契約者としては、解約をするならほったらかしにして失効させるのではなく、面倒でもきちんと解約手続きをする、ということが大切である。
第一、第二の類型について、もっとも分かりやすく、カンタンで、すぐにできる防衛策は、
「加入する保険は給付内容がシンプルで、自分が100%理解できるものにとどめること」
具体的には、
「特約はつけないで、シンプルな単品商品にのみ加入すること」
ではないか。
そうすれば、支払いがあったときに、「あれ?●●●にも入っていたはずだけど、何で支払われてないの?」と気がつくはず。だって、普通に買い物して、商品を持って買える段階で買ったものが買い物袋に入ってない(しかも10~15万円分足りない)にもかかわらず、気がつかないのって、何か変でしょう?そもそも、買い物袋に入っているものが一個なら、忘れようがない。ピザでもアイスでも、トッピングをたくさんつけて、お店側が忘れてしまってもないことに気がつかないくらいなら、最初から頼まなければいい。
どうしても特約に入りたいなら、自分にとっては、それがないことに気がつかないことがないくらい、大切なものに限定すべきでは。もっとも、三大疾病でがんの場合は、契約者本人ががんを告知されておらず、請求も案内できない、という例もあったというので、難しいことも。
● トッピングなし「素うどん」のような保険
さて、本番組のスポンサーからのお知らせです。
このような観点もあって、ライフネット生命はシンプルを極めた商品を作っている。「すっぴん」の保険。無印良品のような保険。トッピングがない素うどんのような保険。必要な機能を盛り込み、そぎ落とした商品。傘にはいくつもの機能がなくとも、雨をしのげれば十分なはず。
よかったら、ライフネット生命のウェブサイトをもう一度、ご覧ください!
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