ときは、2006年7月4日。場所は、溜池山王の交差点近くのランディック第三
赤坂ビル。
1階ではマクドナルドが24時間眠ることなく、小腹を空かせた企業戦士たち
に、ハンバーガーとフライとコーラと、つかの間の安らぎを提供している。こ
のビルの8階にある投資ファンド『あすかDBJパートナーズ』のオフィスにて、
僕らの挑戦は始まった。
このときはまだ、「ネットライフ企画」の原型は何もなかった。あったのは、
机とパソコンと電話とファックス。中古のコピー機。あとは、社長の出口の頭
の中にある事業計画だけ。
本プロジェクトの相棒である社長の出口は、1948年生まれの59歳。日本生命
出身で、かつては生保業界のオピニオンリーダーとして名を馳せたそうだ。著
書の「生命保険入門」(岩波書店)は、業界を俯瞰した基本書として、プロの
間でも評価が高い(と、アマゾンの書評から判断される)。銀髪と独特なしゃ
がれ声が、実年齢よりも年上に感じさせるが、同時に青年のような清々しさと
エネルギッシュさを持ち合わせている不思議な魅力をもった人物だ。
日本の生命保険業界は簡保・共済も入れると、年間の支払保険料が45兆円と
いう、巨大なマーケットだ。しかし、1990年代の金融ビッグバン、そしてその
後に訪れたインターネット時代の到来と、大きく時代が変わろうとしているな
か、生保会社の変革への足取りは重かった。
だとすれば、顧客が求める「分かりやすいシンプルな商品」「利便性の高い
チャネル」といった声にすなおに耳を傾けていけば、きっと大きなチャンスは
あるはずだ。世の中は新しい、セイホを求めているに違いない!細かい戦略は
存在しなかった。あったのは、このゆるぎない信念だけ。
まずは最初の一ヶ月で、これからの事業構想の骨格となるビジネスプランを
作ろう。そう考えて、作業を始めることにした。
しかし、いざ出口と二人で仕事を始めるとなると、心配事は尽きなかった。
まずは、自分の父親と同じ年の、大企業出身のおじさんと二人っきりで毎日
過ごすなんて、話が合うかなぁ。飽きないかなぁ。大丈夫かなぁ。。。
また、考えれば考えるほど、ネットで生保なんて売れるわけないじゃん!と
思ってしまう。やっぱり、契約をする前には、営業マンの話を聞きたいよね。
ついつい、そう考えてしまう。大丈夫かなぁ。。。
そして、シードマネーの出資は決まっていたと思っていたのに、来てみると、
あすかDBJのファンドの方々は、「まだ出資を決めたわけではない。これか
ら事業性を検証して欲しい」という。ええええ。話が違うよー。大丈夫かな
ぁ。。。
そんな不安を連発する僕に対して、出口がにこりと笑ってゆったりと語った:
大丈夫だよぉ。
ボクは、イージーゴーイングなんで、あまり深く考えないようにしているんだ。
絶対に、上手く行くよ。
*****
しゃがれ声を聞いていると、根拠はないのだが、何とかなるような気がして
きた。そんななか、新しい毎日が始まった。
(第二回へつづく)
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