世界一の投資家であるウォーレン・バフェットの名は聞いたことがある人が多いと思うが、彼の投資活動の母体となっているのが Berkshire Hathaway という保険会社であることは、わが国では意外と知られていない。
HBSの仲間に、「新しい保険会社を作るんだぁ」と話すと、皆が「あぁ、お前は日本のバフェットを目指すんだね」と言われる。それはそれで、悪い気がしなかったりする(笑)。
バークシャーの実績を見ると、なぜバフェットが伝説的な投資家として、米国であがめられているかが分かる:
保有する有価証券の一株当たり時価
・ 1965年: $4
・ 2005年: $74,129 (年率28%)
しかし、彼が尊敬されるのはこのような投資実績に加えて、保有している同社の株を売却せずにネブラスカの片田舎で質素な生活を続けていること、そして世の中を見渡す鋭い視点と、ユーモア溢れる人間味溢れるキャラクターである。
ぜひ、一度読んでもらいたいのは、彼が毎年株主に向けて書いている Chairman's Letter である(リンク先は2005年版)。ユーモアたっぷりで、とても株主向けの財務報告書とは思えない。
例えば冒頭では、彼は好業績を上げた傘下自動車保険会社GEICOのCEO Tony Nicely を称えて、次のように述べている:
"Credit GEICO - and its brilliant CEO, Tony Nicely - for our stellar insurance results in a disaster-ridden year. (中略) If you have a new son or grandson in 2006, name him Tony"
また、新規の買収案件を公然と募集する文面で、下記のように述べている:
"Unlike many business buyers, Berkshire has no "exit strategy". We buy to keep. (中略) If you have a business that fits, give me a call. Like a hopeful teenage girl, I'll be waiting by the phone."
彼はたとえ話も面白い。医療訴訟保険について、実際はロスが発生しているが請求がないので気がついていないものが多くあることについて:
"Too often, insurers react to looming loss problems with optimism. They behave like the fellow in a switchblade fight who, after his opponent has taken a mighty swipe at his thorat, exclaimed: "You never touched me". His adversary's reply: "Just wait until you try to shake your head".
ハリケーンなどの天災によって苦戦している再保険事業のGen Reについては、こんな言い方を:
"When we finally wind up Gen Re Securities, my feelings about its departure will be akin to those expressed in a country song, "My wife ran away with my best friend, and I sure miss him a lot"
(妻が僕の大親友と駆け落ちした。彼がいなくなってしまって寂しいなぁ(奥さんではなく・・・)。)
すぐに売却をして私腹を肥やそうとする米国の経営者については、以下のようなたとえ話を持ち出している。大富豪の娘と結婚した若い男が、結婚式の直後に大富豪とともに将来について語り合っている、という設定:
"Son, you're the boy I always wanted and never had. Here's a stock certificate for 50% of the company. You're my equal partner now on."
"Thanks, dad."
"Now, what would you like to run? How about sales?"
"I'm afraid I couldn't sell water to a man crawling in the Sahara."
"Well then, how about heading human relations?"
"I really don't care for people."
"No problem, we have lots of other spots in the business. What would you like to do?"
"Actually, nothing appeals to me. Why don't you just buy me out?"
(特にやりたい仕事はないから、義父さん、今もらったばっかりの株を買い取ってくれない?)
そんなわけで、抜き出していてもキリがないのだが、本当に読んでいて面白い。こんな語り口で、まるで家族や友人に語りかけるように株主に語りかけるのが、彼の魅力なのだろう。
締めくくりに、彼はいかに自分たちが幸せだか、そして毎日職場までタップダンスをして通っているかを述べている。僕も、彼のようになりたい。ビジネスでかかわり合いをもつであろう人たち一人一人に、ユーモアと示唆あふれる視座をもって語れるようになり、そして、今は僕もそうなのだが、毎日職場までタップダンスをして通う日々が続きますよう。
Have a great weekend!
こんちは。
バフェット、いってること面白いよね。
この分ならほんと、100まで生きるかも?
バフェット関連で言うなら、彼とバークシャーの寄付事業のこと、およびアメリカの寄付税制についても書いて欲しいです。
規制のない国アメリカで、寄付団体だけはものすごく厳しい縛りがあることはberkshire以上に知られていない気がする。
日本で寄付が全くはやらないのはキリスト教がないせいでも、日本人富豪がstingyだからでもなく、「寄付=詐欺orカルトorプロ市民」というイメージが強いからじゃないのかな??
投稿情報: たに かず | 2007年2 月21日 (水) 00:58
久しぶりに拝読。
ネット生保にチャレンジされるのですか。なるほど。
私も分野はまったく異なりますが、おそらくは似たような立場で会社の経営にかかわっています。
上場を目指すとかそういった感じではまったくないのですが、バフェット氏の基準で評価してもらえるような会社になったら面白いだろうなあ、などと思っています。
TBさせてもらいました。よろしく。
投稿情報: dunkel | 2007年2 月20日 (火) 07:07
こんにちは。おぼえてらっしゃるかどうかわかりませんが、コンサル会社に岩瀬さんが入られたとき、同様に新人同然で(結構年寄りの)、確か、わずかながら同じ部屋だった木村です(すぐにドロップアウトしてしまいましたが)。岩瀬さんの活動を多少なりとも知って、触発されました。是非とも、ネット生保頑張ってください。
投稿情報: Kimura | 2007年2 月18日 (日) 16:54