「生命保険のコスト開示研究」と、ライフネットの人が見たら大喜びしそうな論文を書かれている江澤雅彦先生を訪ねて、早稲田大学のキャンパスに行ってきた。
今日はよく「学生みたい」と言われるカジュアル姿だったので、新入生のようにサークル勧誘をされちゃうかな?とドキドキしながら歩いていたのだが、ビラを配っている人も、見事なくらいに私を避けて配る。うーん。大人には学生に見えても、本当の学生から見ると、やっぱりおじさんなんだろうか。
先生には、今から30年前に生命保険のコスト開示(具体的には終身保険の利回り開示)が議論され、結果的にすべての契約概要に「コスト指数」なるものが書き込まれたことなどを議論して、いかに日本の消費者が生命保険商品について情報から遠ざけられているかを議論した。
例えば、「通りすがりの外資系生保」さんがいつも薦められている終身保険。将来に備える貯蓄代わりというのは理解できるのですが、消費者からみた実質的な利回りがどの程度だか、ご存知ですか?
私が以前入っていた某社の保険証券(2000年のもの)によると、以下の通り:
変額保険<終身型・無配当>
・ 保険金額1千万円
・ 保険料払込期間37年
・ 初回保険料11,840円
解約返戻金(運用実績によって変動、マイナスになることもあり)
・ 20年:運用0% ⇒ 180万円、運用3.1% ⇒ 249万円
・ 30年:運用0% ⇒ 258万円、運用3.1% ⇒ 430万円
この終身保険の貯蓄部分の実質的な利回りは何%くだろうか。アメリカの議論を真似して、やや乱暴だが、終身保険を30年定期の死亡保障と、それ以外の貯蓄性の部分に分けて試算してみた(厳密には正しくないが、大まかな結論は変わらないはず)。
保障部分の保険料:1,656円(ライフネットの保険料を借用)
貯蓄部分に当たる差額:10,184円
貯蓄部分の払込総額
・ 20年: 244万円
・ 30年: 366万円
解約返戻金の利回り(毎年の複利で計算)
・ 20年:運用0% ⇒ -3.0%、運用3.1% ⇒ 0.3%
・ 30年:運用0% ⇒ -2.3%、運用3.1% ⇒ 1.0%
したがって、この終身保険は1千万円の死亡保険に、20年で-3%~0.3%、30年で-2.3%から1.0%の貯蓄商品がついたもの(運用が0%から3.1%で回った場合)、ということになる。
この超低金利下では、他に利回りがいい商品が存在するわけではないので、これでも買いたいという人も当然いると思いますが、いずれにせよ、利回りはこのようになるということを理解した上で、informed purchaseをしてもらえるように、世の中がなって欲しいものです。
計算ミスはしてないと思いますが、してたら失礼。あくまでブログなので、お許しください。
コメントのコメントに対するコメントです。すみません。恥
結論から申しまして、終身保険の説明はどこの保険会社も、判で押したように、同じような説明だと思いますよ。個人的には、納得することと理解することは、全くの別物だと思います。生意気言ってすみません。。
生保に加入された方は、多かれ少なかれ、皆さん何かに納得はしてるんじゃないでしょうか。商品に納得してる方もいるでしょうし、知友人からの勧めとか、セールスパーソンの人格とか、入り方に納得してる方もいると思います。ただ、本当に商品やら保険のリアルな効能とか言ったものを理解してる方は少ないのでは。
岩瀬さんの説明は確かに一般の理解の域を越えてる感も否めませんが、理解して欲しいと言う世界観が重要なのかと。
岩瀬さんには、恋人に進めたい保険ってくらい平易な言葉で語られると、より広くて深い世界が拓けるのではと。
ps
生命保険って、加入する時のプロセスに違和感を覚えていても、いざ加入するとプロセスを繰り返す面倒さや、長期小口の引き落とし型契約の特徴ですが、一度固定費化させてしまうと視界や認知から消えてしまうため、再認識、可視化させる何かが必要な気がします。
消費者ローンはグレーゾーン金利の撤廃なんかが可視化させる一助になった気が。ライフネットさんは自ら可視化ロジックまで作ろうとされてますよね。
営業職員さんがアフターフォローを柱とするドアノックを始めていますし、可視化される数少ないタイミングなので気づきを与えて頂ければなぁ。
両刃かな。
投稿情報: ド民 | 2009年4 月 9日 (木) 23:27
運用を保険屋任せにしないで自分でやりたい人は終身に入らなければいいだけのことでしょう。利回りがどうであれ、運用とか考えるのが面倒だから保険屋に任せてもいいって人には終身も悪くないのでは。
投稿情報: KT | 2009年4 月 9日 (木) 15:48
ブログに対するコメントではなく、コメントに対するコメントになるので恐縮ですが、通りすがりの外資生保さんの説明はとても分かりやすくて、思わず、「入ってみてもいいかも」と思わせられます。
ライフネットだろうが、他の保険商品だろうが、どうしても今回の岩瀬さんの説明のように、保険というのは直感的に効用を理解しにくいところがあります。
保険の原価等を公開するのも結構ですが、通りすがりの外資生保さんのように、シンプルな掛け算二つで保険の良さを説明しうることこそ、保険業界が努めることのように思います。
投稿情報: hiro | 2009年4 月 8日 (水) 22:56
岩瀬さん、どもです。
ご指名なので・・・(笑)
おぉ、これは良い保険じゃないですか!
なんでやめてしまったのですか~?
ライフネットを立ち上げても続ければよかったのに。。。
まぁ、1000万円必要かは考え方次第ですけどせめて葬儀費用300万円ぐらいは
残せば良かったのにと本当に思います^^;
私の主張を述べます。
すいません、岩瀬さんのように難しい計算ではなく簡単で恐縮ですが。。。
①加入した翌月に亡くなると
たった11840円で
奥様に最低1000万円(運用により+α)を残すことができる
②どんなに長生きしても
11840円x12ヵ月x37年=約525.7万円で
奥様に同上の1000万円以上を必ず残してあげられる
という簡単なことですよね。
つまり、奥様にとっては確実で大きな老後資産ですよね。
あくまでも岩瀬さんの死後の話ですが^^;
岩瀬さんのような金融のプロはもっとすごい運用をされることと思いますが
この保険料負担ができる一般家庭ならきっと悪くないと感じると思うのですがいかがでしょう?
私自身はもちろん色々と加入していますが、自分の娘が結婚した時に
上記数字の保険があれば娘の旦那に加入させますね。
1000万円じゃなくとも500万円でも。
それなら毎月の掛け金は6000円以下ですよね。
300万円なら3600円ぐらいですかね?
岩瀬さんも自分の奥様に聞いてみるのもひとつかもしれません^^
まさに家族に勧めたい保険です。
繰り返しになりますが、上記の保険の果たす役割は
ファイナンシャルプラン上の(将来の)支出である
・自分自身の葬儀費用等
・妻ひとりの老後資金
を効率よく準備するというものです。
それが私のポイントです。
他の金融商品との利回り比較は分かりません。
ただ、確実にこれ以上になる積立があるのならそれは確かに選択肢だと思います。
以上、お名前を出していただいたので補足として主張理由を書きました。
投稿情報: 通りすがりの外資生保 | 2009年4 月 8日 (水) 21:52