留学中、企業倫理の授業でこんなひとコマがあった。舞台はインドにあるナイキかどこかの下請け工場。多数の児童を雀の涙のような賃金で働かせている映像を見せられた。アメリカ人はこの映像に涙し、「ひどい!児童労働を行っている工場は、供給先として絶対に許してはいけない」と、得意の正義感を持ち出す。そうだそうだ。世界の市民に自由を!
これに対して、インド人のクラスメイトの女性が、冷静に反論した。
「あなたたちは、実態を分かっていない。あの子たちは、工場で働かせてもらえているだけ幸せ。この仕事が無くなったら、彼女のたちの両親は、きっと彼女たちは売春か何かに出すでしょう。悲しいけど、それがインド社会の実態。
あなたたちアメリカ人の問題は、実態を知ろうとする努力をしないまま、こうやって自分勝手な正義を押し付けようとすることだ。私たちは悲しい現実を受け入れつつ、少しずつ、自分たちができる形で社会を直そうとしている。」
いつもはおしゃべりなアメリカ人、言葉に詰まる。。。でも懲りずに、次の正義をふりかざすが。
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さて、話題の社会ニュースに対するはてブなどのコメントを読んでいると、このインド人のクラスメイトの発言を思い出させられることがある。
例えば、派遣労働者の厳しさを取り扱ったニュース。従来型のテレビメディアであれば、「かわいそう・・・」という単純な感情を想起させて終わっていただろう。
しかし、はてブなどのコメント欄では、「実際はあんなやつはいない」とか「現場にいたけど、そこまでひどくはない」とか「上から目線だ」とか、「実際はもっとひどい」とか「でもやっぱりかわいそう」とか、「政治家が以前このように発言していた」とか「外国ではこんなことになってる」とか、実に多様なコメントが出てくる。
はてなーたちはいつの間にか、ニュースや記事をそのまま鵜呑みにするのではなく、まずは一回は疑ってみたり、つっこむことを体で覚えたのではないか。
はてなーは斜に構えているようだが素直であり、感受性が豊かである。正義感が強く、フェアで、いいものには「いい」と正当な評価を与える。何かがおかしいと思ったら、ウェブで検索して、他の主張を裏付ける情報を持ってくる。議論が極端にふれはじめると、誰かが「でも、これっておかしくね?」と、議論を押し戻すようなコメントをする。これによってより多面的な意見を考慮した、バランスの取れた「世論」が形成されていく(追記:今はまだそこへ移行する途中であり、記事の中身をちゃんと読まずに炎上させたり、陰湿なコメントで盛り上がったり、人がいたずらに傷つけられたりすることもあるのでしょうが)。
このような形で、全体から見ればほんの一部の人であれ、発信したニュースに対して「世論」が瞬時に視覚化され、かつ定量化される(はてブの数)となると、それはメディアに対して一定の影響を持つようになるのではないか。少なくとも、私は最近になっては「どんなブクマがつくかなぁ」と意識しながら、事前に突っ込まれそうなポイントは極力理論武装をして書くようになった。
実際、ソーシャルブックマークの影響力はすでに抽象論ではく、たとえば金融市場の動きが実体経済に還流して影響を与えるように、ネット上での動きがリアルなビジネスに影響を与えている。
ライフネット生命が「保険の原価」を開示したのは昨年11月だったが、その直後は一部の新聞が報じただけで、さして話題にならなかった。火がついたのは、ダイヤモンドオンラインが「保険の原価開示に怨嗟の声」という挑発的なタイトルの記事を書き、これにソーシャルブックマークが大量についたことだった。
それを参考にして、ヤフートピックスの編集チームがニュースのトップページに掲載した。これによってライフネットの名前が一気に広がり、その日は24万PVのアクセスが殺到。申し込みも対前月比で大幅に伸びていくこととなった。
いずれ、総体としてのソーシャルブックマークのコメントが一つの「世論」として意識されるような存在になるならば、メディア側も「これくらい取材しておかないと、また突っ込まれるな」とか、「多面的な見方をバランスよく取るようにせねば」と意識しながら、ニュース作りをするようになるような気もする。そうなったときは、はてなーの健全な批判精神が、日本のメディアを変えることになるのでしょう。
まぁ、こういう記事を書くとまた、「前から言われてること」とか「過大評価しすぎ」というコメントが入るのでしょうか。それもまた、はてなーの健全な批評精神ということで。
岩瀬さん!いつも夜遅くまでお疲れ様です。
今日はお忙しい中、サインをしていただき、ありがとうございました。
岩瀬さんのサインが書かれた本を読みたいなと思っていたため、
目を通さない状態でお願いしてしまいました。
心をうきうきさせながら、早速拝読させていただきました。
人の何十倍も何百倍も努力をされた岩瀬さんの貴重な経験から得られた
エッセンスが惜しげもなく書かれていて、岩瀬さんの”多くの人に幸せになって欲しい”
といった熱い思いが伝わってき、私もとても温かい気持ちになりました。
岩瀬さんの魅力を列挙したらきりがないので、ここでは控えておきます。
活気や笑顔に溢れた日本、世界になって欲しいですね。岩瀬さんの言葉や、
行動一つ一つもその要素になっていると思います。
私もしっかりと自分と向き合い、実りある人生を送れるよう、
そして周りの人が幸せでいてくれるよう成長したいと思いました。
私はLNのことを知ったときから、LNそして岩瀬さんが大好きです。
LNは本当に素敵な会社ですね。多くの人に出口さんや岩瀬さん達の
情熱を知ってもらいたいです。大変なことも多いと思いますが、
これからも頑張ってくださいね。陰ながら応援しています。
PS もしよかったら、いつか下記の四つの香りの中で私の印象に当てはまるもの
教えていただけたら嬉しいです♪もちろん当てはまらないものでも!
①ローズ ②ラベンダー ③オレンジ ④グレープフルーツ
投稿情報: ryoko | 2009年3 月11日 (水) 00:13
インド人のクラスメイトの女性の反論はとても理解できます。私は今、中国の華南地区で働いています。昨年、「労働契約法」という労働者保護色の強い法律が施行されましたが、労働者を抱えたくない企業が、法律施行前に労働契約を打ち切るなど、政府の意図と逆の現象が起きています。
よかれと思ってやっていることも、よくよく別の角度から検証しなければいけないということでしょうね。日本の派遣切りが取り沙汰されていますが、企業側にしてみれば、固定的な労働力と流動的な労働力を両方持つというのはとてもリーズナブルなことです。また、派遣社員の方も、一部では正社員より気楽だという理由で派遣社員を選んでいるという記事を読んだこともあります。(誤解の無いように書いておきますが、私は派遣切りに賛成しているわけではありません。多面的なものの見方があるということを書きたかっただけです)
問題なのはある事象の一面だけを捉えて、マスコミが大々的に喧伝し、大多数の人がその意見を鵜呑みにしてしまうことでしょう。そういった観点から、今回のはてなーの存在というのは、従来の日本にあまりなかったシステムのような気がします。
これだけネットが身近で手軽になってくると、個々人が近くで起こった事件を簡単にWebにアップできるようになります。そうすれば、国民の大多数が新聞記者のような存在になり、「ニュースを配信するだけ」のマスコミは不要になる世界がくるかもしれませんね。
投稿情報: 苗村屋 | 2009年3 月10日 (火) 21:49
岩瀬さん初めまして。伊藤塾での岩瀬さんの講演を拝見させていただきました。僕は現在東京大学の法学部に所属して伊藤塾にも通っています。今は将来は法律家として活躍したいなと漠然と考えています。岩瀬さんのお話の中で紹介された「点と点を繋ぐ」という話にすごい感化されました。自分は将来社会人として活躍できているかということを考えるとすごい不安になることがありました。しかし、今自分にできることを意識して努力してその過程を楽しみながら生きていこうと思いました。当面の目標は司法試験に受かることですが、そのあとの進路についても法律家と一義的に考えずに色々な世界を知り自分が納得できる人生を歩んでいきたいです。ありがとうございました。
投稿情報: コウ | 2009年3 月10日 (火) 16:54
岩瀬さんの伊藤塾での講演を、インターネット配信開始しました!ご覧になりたい方は、伊藤塾の何かインターネットクラス講座を申し込んでいただければ無料でご覧になれます(笑)。
当日行けませんでしたが、人生に迷える若者たちへの親身になってのコメント、聞いていて感動いたしました。ありがとうございます!
保険ですが、以前アフラックのおじちゃんが営業に来て「子供のためとはいえ、高額な保障を用意しても意味ないよ。死亡保険金もらった奥さんが何年で使い果たすか知ってますか。2-3年ですよ。豪遊したりしてしまうんです。」と言われたのが衝撃で、速攻やめました。(何のための営業なんじゃ)
ライフネットさんが立ち上げになっていち早く、この点をお問合せし「自分の子供の学費だけに確実に使ってもらいたい、夫が飲んだくれてしまったり、夫の後妻に取られるのでは意味がない、弁護士と提携して死後の保険金管理もしてくれませんか」と言ったところ、現在そういうサービスはないとのことで断念しました。
「合格後を考える伊藤塾」の元塾生さんで、弁護士のお友達もいっぱいおられる岩瀬さんなので「死亡後を考える死亡保障」も、ぜひお願いいたします!!
投稿情報: お掃除おばさん | 2009年3 月10日 (火) 15:28