新著で一番つっこまれそうなのがこのメッセージ。ブランドがまったく関係ない、というつもりはない。いま、自分のビジネスでもブランド作りに力を入れているし、ないよりあった方が何かと有利に決まっている。
伝えたかったのは、「世間の評価(≒ブランド)に惑わされることなく、自分の本当にやりたいことや、自分が心の奥底で思っている評価を大事にすべき」ということ。
恋愛だったら分かりやすい。友人の間での評価はぱっとしないが、自分はなぜか惹かれる相手がいるとする。そのときに、自分の直感に素直に行動するか、それとも他人の評価を気にするのか?
この例だと答えは明らかだが、仕事になると、どうも自分の直感で判断しようとするより、世間で「花形」とみなされている職種に惹かれてしまいがち。スポーツができる人気者にバレンタイのチョコが集中するのは、せいぜい小学生くらいなのに。
加えて、「ニッチを狙う」というのは精神論ではなく、競争戦略論的にも正しい。BCGの元上司でヘルスケア業界の専門家として活躍している方がいる。この人に、「なぜヘルスケアに特化しようと思ったのですか?」と聞いたことがある。
「え?だって、簡単でしょ。当時のBCGでヘルスケアをやろうとする日本人がほとんどいなかったから。『競争がないところに行け』というのは戦略論の基本。なのに、皆自分のキャリアとなると、たとえば消費財とか金融とか、華やかそうなところに行きたがるんだよなぁ」
私が生保業界を選んだ理由の一つも、「同世代のアグレッシブなアントレプレナーが挑戦しなそうな分野だから」「MBAの進路としてほとんどないから」ということがある。だってほら、私が「モバイル」とか「SNS」とか「投資ファンド」とかやっていても、おもしろくもなんともないでしょう?
ブランドが関係ない、という見出しはちょっとミスリーディングだったかも知れない。世間体や他人の評価を、自分の「内なる声」より優先させることはしないでください。加えて、ブランドを目標にすると、競争が厳しいですよ。混雑しているところからちょっとだけ外れてみて、自分ならではの「立ち位置」をいち早く見つけることが、自分のキャリア戦略論的に正しいのですよ、ということなのです。
以上、「超凡思考」1-4、「ブランドも知名度も関係ない」の補足です。
* こういう話って、「誰に語る資格があるのか」という点が難しいですよね。私はたとえば「MBAは意味がない」というメッセージであれば、MBAに行ったことがない人が「自分の周りのMBAにはアロガントだが仕事がたいしてできない奴が多い」と語るより、実際にMBAを経験した人が、メリット・デメリットを踏まえて語る方が、ずっと説得力はある、とも考えていますが。
文末のところ
岩瀬さんの書かれたとおりだと思います。
「MBAは意味がない」ってメッセージじゃほぼ100%心で反発を起こしますが、
客観的にメリットとデメリットを説明して、
(ここで読み手にその視点を見せて、考えもらって、)
そのうえで経験論にもとづく主張を言えば、一応の理解はしやすくなりますよね。。
個人的にはMBAは非常に魅力的な響きで、卒業した方の努力を思うとすごいとおもっちゃうのですが。。
゛アロガントだが仕事がたいしてできない"
は嫉妬の裏返しなのかなぁ。。
岩瀬さんもビュービュー吹く向かい風を追い風に変えながら頑張ってください!
投稿情報: ヒロシ | 2009年2 月15日 (日) 17:07
>>加えて、「ニッチを狙う」というのは精神論ではなく、競争戦略論的にも正しい。
非常に共感します。
所属すること自体にブランドが発生しない職のほうが自身のブランドを確立しやすいのかな、と最近思ったりもします。元々華やかな場所で多少自分が華やかになったところで、全く目立たないですしね。
著書、是非読んでみます!
投稿情報: sako | 2009年2 月15日 (日) 00:08
岩瀬さん、おはようございます。
この章を読んで考えたのが、日本人のブランド好き(いわゆるヴィトンやグッチなど)に関することです。日本人はブランドがとても好きですが、皆が同じブランドを好きですよね。これはわかりやすく、人と違うことをしていない、という安心感なのかなぁという気がしています。
仕事も同じように、ブランドや知名度には安心感があるのでしょう。何となく周囲にも説明がしやすいし。。みたいなことも関係しているのかもしれません。
個人的には、「ハーバード~」を読んでいたので、岩瀬さんが生保の副社長になったということは「さもありなん」といった感じでした。私も自分の今後のキャリアを考える上で岩瀬さんや岩瀬さんの先輩のような視点から考えられる人間になろうと思います。
投稿情報: ゆき犬 | 2009年2 月14日 (土) 08:27