「かんぽの宿」の譲渡について、建設費が2,400億円もかかったのに109億円で譲渡しようとしたのはけしからん、といったような話が出ている。詳細は知らないが、これはバランスシートの見方や、「企業価値(corporate value)」と「資本価値(equity value)」がごっちゃになっているのではないかと思う。
過去の建設費はサンクコストであり、譲渡価格は関係ない。また仮に資産が時価で(≒企業価値)2,400億円あったとしても、負債が2,30億円あったら、資本価値(≒「譲渡価格」)は100億円しかない。毎年赤字を垂れ流しているのであれば、その価値はもっと低くなる。
私がかつて勤めていたリップルウッドでも、破綻した長銀を10億円で買ったことが「濡れ手に粟」のように報じられたこともあった。でも、3兆円のバランスシートは大幅な債務超過(≒借金の方が資産よりも多い)で、会社としての体をなすために追加で1,200億円の出資をする必要があったのであり、かつ国内外のあらゆる投資家を回っても、誰も出資をしようとしなかった、という経緯を忘れてはならない。10億円というノミナルな金額が、フェアプライスだったわけである。
今回も問題は109億円という「価格」ではなく、競争入札などの公正な手続きにのっとって、価格と買い手が決められたか、という「手続き」ではないだろうか。
(追記) 簿価123億円だったそうです。それでも、PBRが1.0以下の企業がたくさんある世の中ですから。
入札の経緯は極めて不透明で、残念ながら「競争入札など公正な手続が取られた。」とは言いがたそうですね。
一つの時代が終わる過程の中で、様々なけじめがつかなければいけないわけですね。
そういう観点から見るとオリックスは(ライブドアやグッドウイルと同じように)いまのかたちでは残れないんでしょうね。
オリックスはいまや古代ローマでいう「国家の敵」であり、法の保護の外におかれるわけでしょう。
投稿情報: たに かず | 2009年2 月 8日 (日) 22:11
「負債が2,30億円あったら」→「負債が2,300億円あったら」かな?
投稿情報: もぎゃ | 2009年1 月31日 (土) 10:15
詳細は知りませんけど、これって天下り確保のために作ったもので、多額の損失を出したって事が問題なのではないのですか?
例え「公正な手続きにのっとって、価格と買い手が決められた」としても、今後同じような過ち(損失)を繰り返さないために責任を問うべきだ、という議論かと思ってました。
投稿情報: 大学生F | 2009年1 月30日 (金) 11:19