大統領選で話題を呼んでいる共和党の副大統領候補のサラ・ペイリン氏。日本のメディアではなかなか素顔が浮かび上がってこないが、実際はヒラリー・クリントンを上回る、「強い女」らしい。数日前のNew York Times Op-Ed 記事 "Clash of the Titans" (数日で閲覧不可能になると思われるので、早めに check it out)にて、これまた凄腕で有名の女性記者 Maureen Dowd が、「2012年の大統領選でヒラリーとペイリンが討論をしたら」という架空のシナリオを描いているが、その中でペイリンがどのように米国で見られているかがよく分かる。
辞書にも載ってない表現がたくさんあり、理解できない箇所がいくつもあるのだが、一部興味深い箇所を引用してみる:
ペイリン:ヒラリー、あなたの「ブルーカラーのウェイトレスとして夜勤して、安酒を飲んでいた」とかいう話には騙されないわ。そちらの話は選挙対策かも知れないけど、私のは本当、自分のDNAに刻まれているの。あなたと違って、私は本当に午前3時に起きて仕事してた、(猟で撃った)ヘラジカのはらわたを抜いたり。あなたがキザっぽいウェルズリー大学に通っていたあいだ、私は6年で6回も大学を転校した。あなたがイェールのロースクールに通ってた間、私はミスコンに出場して、水着姿で審査員に後姿を見せて、奨学金のお金を稼いでいたのよ。
クリントン:アニー・オークリーさん、勘違いしてるようだけど、恐竜は4千年前よりもずっと前に絶滅したのよ(注:ペイリンがどこかで言い間違えた?)。あなたがこの4年間で米国に大きな影響を与えたことは、認める。女性が皆あなたの真似をして、髪をアップにしてることとか、カワサキカズオがデザインした$395のふち無しチタン性眼鏡をかけてることを言っているんじゃない。あなたとジョン(マケイン)は、4つの国と戦争状態になってる-ロシア、イラン、イラク、アフガニスタン。この間、ビン・ラディンがパキスタンのショッピングモールに、テレビCMを作るお店を開いている、というのに。
ペイリン:これらの戦争は、神の思し召しよ。
クリントン:あなたは女性を助けたいと言っていたけど、「女性はもっと一所懸命働いて、一所懸命祈れば何でも手に入る」という馬鹿げた持論によって、女性は傷ついただけ。あなたはメディケア(高齢者向け医療制度)をEbayでオークションにかけて、民間業者に売却しちゃった。障害児向けの予算を削ってしまった。ドブソン最高裁は、中絶、進化、そして銃規制をすべて違憲としてしまった。性教育をすべて禁止した結果、高校生の妊娠も蔓延。・・・資源政策については、あなたの前ではディックチェイニーもちっぽけに見えてくるわ。極秘のエネルギー会談で、北極熊を絶滅させようとたくらんだ。おかげで、アラスカは砂漠なしのクウェートになってしまった。あなたのエネルギー政策は、「裏庭にDIYの油田を掘った人に減税」というものだけ。しまいに、「もっと石油を掘りま省」まで作って、だんなのToddを責任者にしちゃって。
ペイリン:私がえこひいきをしたとでも言ってるの?自分のオトコをコントロールできてるだけ、まだましでしょ?ボスニアの偽スナイパーの銃砲でびびってるくらいなら、私のライフルの音を待っててごらん。・・・
・・・ペイリンのバックグラウンドや政策(中絶反対、アラスカで石油を掘りまくり:演説の最後では、"Drill, drill, drill more!" と盛り上がった、など)を理解していないと堪能できない部分もありますが、いずれにせよ、壮絶すぎるやり取り。翻訳していて、疲れてしまいましたが、これでも全体の5分の1くらい。ぜひ、元の記事を読んでみてください!ちなみに、これがスポーツ新聞ではなく、クオリティペイパーの敏腕記者によるものだから、米国ジャーナリズムの懐の深さを感じさせられる。欧米のメディアを追いかけていると、今回の大統領選も、また違って見えてくるかもしれない、そう痛感させられた記事でした。
恐竜が4000年前に絶滅した、のくだりは
(ペイリンが属するとみられる)宗教保守派が「聖書の記述どおり、4000年前のノアの洪水で恐竜は絶滅したのだ。」とかトンデモを主張していることへの皮肉ではないでせうか?
投稿情報: たに かず | 2008年9 月11日 (木) 22:28