電撃的に政府による救済が決まり、破たんを免れたAIG。ここ数日間の内部の動きについて、今朝のWall Street Journal はドキュメント風に綴っている。以下、時系列で出来事のポイントを抜粋。
"Bad Bets and Cash Crunch Pushed AIG to Brink"
(「悪い賭けとキャッシュ不足がAIGをギリギリまで追い込んだ」)
Wall Street Journal, 2008/9/18
・ 金曜の時点では、AIGはJPモルガンと買収ファンドのブラックストーンらと共同で、必要資金を計算していた。前日には200億ドル(約2兆円)とされていたが、不動産関連の証券が急激に値下がりしたことで、この日には倍の400億ドル(約4兆円)に膨れ上がっていた。
ニューヨーク州の保険監督当局は、同社に子会社から200億ドルの資金を調達することを許した。これによって、「あと200億ドルさえあれば破たんを免れる」とAIGは考えていた。
・ 土曜には、社内には安堵感が漂っていた。ファンドのKKRやJC Flowers(新生銀行の投資家)、同業のアリアンツやAXAも、同社オフィスにて資産買収を検討。夜には、ファンドと条件を合意さえできれば、資金調達の目途は着くと確信。
・ 日曜に、AIGは困った事実に気づいた。子会社の一つが、別途200億ドルの調達が必要となることが明らかになる。ファンドのKKRとTPGは、200億ドルで会社の50%を買収する案を提示。もっとも、条件として銀行ないしFedから何らかのクレジットラインが提供されることが提示されていた。
AIGはこの条件を飲もうとしなかった。日曜の夜にはアジアの市場が始まり、資産価格の暴落とともに600億ドル必要なことが分かってきた。
この時点では、財務長官のポールソンも、ニューヨーク連銀のガートナーも、あくまで民間セクターでの救済策を考えていた模様。
・ 月曜の朝、AIGはニューヨーク州保険監督当局に、破たんを免れるためには700億ドルが必要と連絡。それから午前中に政府の依頼でJPモルガンとゴールドマンが連銀のオフィスで検討した結果、必要金額は800億ドルと膨れ上がった。
1時半の時点で、ポールソンは「いまニューヨークで行われていることは、政府からのブリッジローンとは関係ない」と公的資金の投入を否定。しかし、午後が遅くなると、JPモルガンとゴールドマンも損がどこまで広がるか試算できず、救済できないことが明確になった。連銀と財務省は午前2時まで検討を続け、連銀のオフィスではモルガンスタンレーのチームが午前4時まで分析作業を続けていた。
・ 火曜になると、AIGの経営陣は同社のクレジットラインを限度枠まで引きだしたが、それでもわずか39億ドルしかなかった。株価が2ドルを切り、もう限界に近づいていた。
午後3時半にポールソンとバーナンキはブッシュ大統領に報告し、4時にニューヨーク連銀と最終確認の電話をした。その直後、わずか3ページのタームシートがAIGに手渡しされた。政府からの提案内容は "draconian"、極めて厳しいものだった。850億ドルものつなぎ融資が、12%近い「懲罰的」な利子を伴うもの。ガートナーとポールソンは5時からのAIG取締役会の10分前にCEOに電話を入れ、「これが我々からの最終の提案だ。そして、条件が一つある。CEOのあなたには辞めてもらう」という最終通告を行った。
その後、AIG取締役会は提案を受け入れた。
(続く)
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