「安いからって売れるわけではない、と言われていますが」「やっぱり生命保険はコンサルティングをしてもらって入った方がいいのでは」と、取材で聞かれた。
確かに、自分にとって都合がいいときに、都合のいい場所で、(営業のプレッシャーがない)純粋に中立な立場で、無料で相談に乗ってもらえるなら、コンサルティングをしないよりも、してもらった方がいいに決まっている。
問題は、それに伴う一連のコストだ。
- 忙しいなか、どれだけ時間を使いたいか。前もって時間を決めて、どこかで待ち合わせをして、何度も会って相談したいか?
- 相手はどういうインセンティブをもっているか。契約を成立することで大きなコミッションをもらえる人が相手だとして、本当に中立な相談ができるのか?
- 手数料が保険料のなかにバンドリングされているから意識しないが、仮にその手数料を外出しにした場合、その手数料を支払ってまで、手厚いサービスを受けたいか?1万円ならいいかも知れないが、10万円だったら?20万円だった?
結局、対面で営業員から相談を受けることには一定のコストが伴うことを意識した上で、上記のコストを払ってでも受けるか否か、それとも生命保険には最小限のコストしかかけたくないので、このようなコストを払わずに、多少面倒でも自分で直接やって浮いたお金を貯蓄投資に回すか、そのトレードオフを意識して、能動的に選択することこそが、大事なように思う。
そもそも金融商品には、「お得なもの」というのはない。すべてのサービス、リターンに対しては、コストとリスクが伴うのです。お得なものを探すのではなく、「コスト・リスクと、サービス・リターン」のフロンティアを描いた曲線上で、自分がどこを選択するか、だけなのです。
また、これは投資信託などで考えると分かりやすいのですが、効率的な市場のもとでは、圧倒的なパフォーマンスで他を出し抜くことも難しい。結局、手数料をどれだけ抑えられるかが、長期のパフォーマンスを規定する。その自分の選択が、月に数千円の差でも、年に数万円、長期では数10万円の差になりうるのです。
そんなことを、お答しました。
同じ商品をネットで買えば安く買えるのに、高くてもデパートで買う人がいます。つまり商品説明のサービスの対価を払ってもよいと考える人達でしょう。保険商品も同じことが言えるのではないでしょうか。ネット生保を選好するのは、生命保険について十分に調べて理解して納得して、よって対面の説明は必要なく、低コスト、かつ大手のブランドは重要でないと考える消費者ではないでしょうか。将来このような消費者が増えて、生保商品がコモディティ化した時に、ネット生保が大手を脅かす存在になるのではないでしょうか。
投稿情報: tsuka | 2008年5 月30日 (金) 13:39
お久しぶりです。
このエントリーとは関係ないですが...
ライフネットの生命保険、加入することにしました。6月に転職するため、会社のグループ生命保険がもうすぐきれます。このタイミングも何かの縁かなということで。
僕が死んだときはよろしく。
投稿情報: ニヤ | 2008年5 月30日 (金) 10:55
私なら、本当に安心で魅力的で自分の助けになるだろうと思った商品だったら、電話相談で十分かなと思います。
もし、低コストのコンサルティングをするとしたら。。。オンラインのテレビ電話みたいなのだったらぼちぼち安心感もあり、コストもそんなにかからないかなぁ、、、なんて思いました。
投稿情報: rave | 2008年5 月30日 (金) 01:18
例えば、コンサルティングよりもレコメンドという視点もあるかと思います。支援者によるレコメンドや、同じような環境の方の商品選択結果は、ある意味、手厚いサービスにも勝るのではないでしょうか。
手数料をどれだけ抑えられるかではなく、手数料をどこまで他に転嫁できるかこそ、ネットビジネスの醍醐味だと思います。
投稿情報: HIRO | 2008年5 月30日 (金) 00:11
『そもそも金融商品には、「お得なもの」というのはない』
こう言い切る金融業界の方は素晴らしいと思います。
現在、山崎元さんを始めとしてブログでの発信、新聞、検索連動広告と各種PRをされていますが、望むべくは、なるべく多くの方が御社webサイトを見る機会が増えればと思います。
投稿情報: Goro Shimazaki | 2008年5 月29日 (木) 17:35
大変勉強になりました。思わず「その通り!」と画面を見ながら、声をあげてしまいました。
私のようなサラリーマンだって、湯水のように使えるお金を持っていれば、英国製服地を使ったオーダーメードの紳士服を着てみたい。生地の選定、採寸、型紙制作、仮縫い、本縫い…完成の工程を経て、1着何十万円もするスーツを着てみたい。しかし、全ての工程を独り占めにして制作される、このスーツの値段のほとんどは材料費(生地代)ではなく、仕立屋さん(紳士服屋さん)の手間賃だ、生地代だけだったら、私が普段着ている1着2万円しない既製のスーツだってオーダーメードの高級スーツだって変わらないだろう。だったら私は、既製服で充分だ。なんてことを考えた。
材料費(生地代)は保障に充てられる保険料(純掛金)、採寸や型紙制作、仮縫いなどの仕立て代がコンサルティング代っていうかコスト(附加掛金)って感じかな~。
でっ、岩瀬さんのところのホームページが既製服の縫製代って、ところかな~。「個別のコンサルティングはコスト高になってしまうけど、予め想定される相談内容を既製で作っておいて、皆さん自由に読んでください。」ってすれば、コストは安く済む。一人一人のコンサルティングではなく、既製のコンサルティングってことです。実によく考えられて作られたホームページだと思う。そして、岩瀬さんの取材に対しての回答はもっと素晴らしいと思いました。
あと…、ふっと思ったんですが、保険契約を考えるとき、本当なら必要な保障額を1番最初に考えるべきなんでしょうが、私(典型的な一般サラリーマン)は、保険料が月々○○円位の保険があるかな~って考えてしまいます。確かに万一の時を考えてはいるのですが、日々の生活だって考えないわけにはいかないですからネ~。ですから、私の個人的な希望としては、「生年月日、性別、月々の負担可能な保険料、そして死亡だけ、入院だけ、もしくは両方等を選択」と入力すると、「あなたが指定した月々の保険料だと、死亡保障○○万円、入院保障○○万円です…。」なんて、応えてくれると便利かな~なんて思いました。
投稿情報: sugiyamahayato | 2008年5 月29日 (木) 13:33