生命保険会社の価値はどのように算定すればいいか?以下、生保も相互会社ではなく株式会社であるという前提で話をする。
「普通」の会社であれば、例えば当年度の純利益に15倍~20倍といった倍率をかけた指標(PER)を概算値として使う。これは、将来に渡って生み出されるキャッシュフローを現在価値に割り引いたものと理解されている。
これに対して、生命保険会社のバリュエーションでは、PERといった指標は適していない。ある1年の売上と費用を見ても、正確に事業の収益性を反映していないからだ。
もう少し詳しく説明すると、ある時点でのお客さまは、将来、何10年にも渡って保険料を払い続けるという約束をしているので、すでに将来に渡っての売上/キャッシュフローは(ある程度)確定している。
これに対して、このお客さまに加入してもらうためにかかった費用は当年度にすでに発生しているので、
・ 売上=将来に渡ってずっと発生
・ 費用=1年で発生
というのを揃えずに単年度の損益だけをみても、エコノミクスを正確に捉えられないのだ。
そこで、保険会社のバリュエーションでよく使われているのが、embedded value という概念。これは、一つ一つの契約が将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値を算出し、これに年度末に会社にある純資産を足したものである。保有している契約から生まれるキャッシュフローの総和に近い。
ただ、これだけではある一定の時点における契約価値の総和を求めたに過ぎず、むしろ解散価値に近い。実際は会社がゴーイングコンサーンとして事業を継続する限り、新契約が増えるに従ってembedded value自体が毎年増えていくことになる。
したがって、当年度の利益を何倍かするのではなく、当年度末のembedded valueを何倍かしなければならないわけだ。実際には、前年度から増加した分を、8-10倍して足すことが多いようだ。
こんな話を、ファイナンスに興味がある人以外にも理解してもらえるよう、もっと噛み砕いて説明したいと思ったのですが、、、難しいですかね~。だから、何?という風に思われてしまったでしょうか。生保の特殊性は、こんな場面でも出てくる、ということを言いたかったのかも知れません。
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投稿情報: Ezhajha | 2013年3 月10日 (日) 20:07
はじめまして。素人投資家です。
生保会社のバリュエーションはこれまで、考えた事もなかったのですが、
銀行などの金融機関で用いられる
Equity DCF法とも少し違うのですね。
マニアックどころか非常に興味があります。
投稿情報: YK | 2008年5 月15日 (木) 21:16
マニアックな内容の割には、予想外に反響がありましたね!今後も、生保ネタをもう少し書いてみようと思います。
> habaneraさん、
日本語訳は「潜在価値」のようです。失礼しました!解約率は、当然計算式の中に含まれています。
> kaka-san, crystal-san, ap-san,
次回の宿題にさせてください!
> 後田さん、
「終身保険は106歳」というところですね。詳細まで正確性を期すのは大変ですよね。この当たりは、保険料の前提となっている死亡率・平均余命と実際の全国民データとの違いで説明されてもよかったのではないか、とも思いました。今後とも、宜しくお願い致します!
投稿情報: Daisuke | 2008年2 月11日 (月) 10:06
embedded value …
何故こんな言葉を使って
”ファイナンスに興味がある人以外にも理解してもらえるよう”と思えるのでしょう?
それと生命保険は会社にもよるのですが、「解約率」を加味しないと絵に描いた餅でしょう。(してるのかもしれませんが)
希望的観測に元づくものではなく、過去のデータが語るシビアなものをね。
投稿情報: habanera | 2008年2 月 8日 (金) 01:07
バツ1主婦です。なんか「水イボ」が出来ちゃったぽいです(>_<)昨日この生命保険会社の価値を読みながら深く考えさせられました。この水イボ…、調べたところによると一個からどんどん増えるらしい。しかも人にもうつるウィルス性だとか(泣) 治療としては、ピンセットでつまんで中のウィルス汁を取るみたい。そんなの自分でやるの怖いに決まってるじゃん(T_T) と、そこから あたしの妄想が始まった。仮にあたしが今入ってる保険に手術特約が付いていたとする。それは今流行りの日帰り手術代(無制限)が出て、しかもラッキーなことに「水イボ汁取り手術」が約款の該当手術欄に書いてあったとしよう(もちろん実際はない♪) あたしは増え続ける水イボの汁取り手術に、エステに通うが如く何回も通うことでしょう。そして、あたしの手から子供や友達にうつり、世の中の人みんなが水イボにかかり、みんなが同じ保険に入っていたら……。あたしの一個の水イボから大変なことに。
と妄想してたら、保険会社さんは大変だな…とつくづく思いました~。そして、これからは気まぐれで加入して、気楽にすぐ解約するのはやめようと心に誓いました。結局、水イボじゃなくて手湿疹みたいです、良かった良かった(*^▽
投稿情報: サクラ色 | 2008年2 月 7日 (木) 22:11
下の方のコメントに加えて、予定利率のディスクロージャーについて是非業界に革新をもたらして下さい。予定利率って聞けば教えてくれるのだけど、保険証券にも書いてなかったりして、既存の大手生保はどうも積極的にディスクローズしていません。御社の標榜する「シンプルでわかりやすい保険」、期待してます!
投稿情報: kaka | 2008年2 月 7日 (木) 14:24
私もよく判らないながら、(^ー^;、とても興味深く拝見しました。
この件から話が飛びますが、生命保険会社は、顧客から預かったお金を、機関投資家として、どのような金融商品に投資・運用するものなのでしょうか?そのような点も、いつか説明していただけることを、楽しみにしています。
投稿情報: crystal | 2008年2 月 7日 (木) 06:44
はじめまして。
11月にこちらのサイトで取り上げていただいた「生命保険の『罠』」を書いた後田亨です。
今日、拙著に私の勉強不足から、一般の方々に誤解を招く記述があったことが判明しました。
訂正のための正式なコメントを出すには、今少し時間がかかりそうです。が、後日でも、上記のアドレスから弊社のブログにアクセスしていただければ幸いです。
以上、今日、取り上げられたテーマとは無関係ですが、期日を遡って書き込みをしても、皆様に読んでいただけないかも?と思い、ここに書かせていただきました。ご了解ください。
*御社の今後にはとても期待しています。
投稿情報: 後田亨 | 2008年2 月 6日 (水) 21:29
私は高校生ですが、難しいですね~。
ファイナンスには興味があるので、また勉強します。
投稿情報: oscar | 2008年2 月 6日 (水) 18:32
初めてコメントを書かさせていただきます。
会社価値を算定するにあたり,保険会社のリスク(例えば,地震や病原菌の蔓延などで保険金の支払が短期間に多く発生するなど)はどのように評価されるのでしょうか。
投稿情報: ap | 2008年2 月 6日 (水) 12:23
だから何、どころか、とても興味が惹かれました。岩瀬さん、有難う!
投稿情報: kz | 2008年2 月 6日 (水) 09:45