日経ビジネスオンラインで連載中の「投資ファンドは眠らない」に最新記事、「アクティビズムは死なず」が掲載されました。
スティール・ブルドック事件と村上ファンド事件の判決を受けて、どうもわが国ではアクティビストへの風当たりが強まっているように思える。「あれは一部の『悪い』ファンドに対してだけであり、『善良な』アクティビストファンドに対しては判決の影響はない」といった趣旨の説明をする人がたまにいますが、これは本質的に誤った理解だと思います。
何度も本ブログで書いているように、資本市場では、「善」も「悪」もない。すべての参加者が、もっぱら自らの利益実現を求めて、証券の売買を繰り返しているだけ。「敵対的」というのも、「現経営陣に対して敵対的」というだけであって、他の株主に対して敵対的であるわけではない。
また、「濫用的買収者」の概念のルーツにあるのは、1980年代米国のユノカル判決ですが、当時は1970年代の多角化ブームで無関係の事業を傘下にかかえるコングロマリットがいくつも存在し、株式市場の低迷と、今のように裁定取引者としてのファンドの存在が薄かったこともあって、株価が資産価値の総和を著しく下回っている会社がいくつもあった。それを狙って、勝手は会社を分割・売却して設ける投資家の存在があったわけです。
今の市場環境においては、当時のようなコングロマリットは存在していないし、そこまで明らかな裁定取引の機会も少ない。せいぜいあるのは、現預金や遊休不動産などがバランスシートに残っている企業だが、仮に会社からキャッシュを吐き出させたところで、会社が解体されるわけでもない。それを求める投資家を「濫用的」とよぶのは、行き過ぎではないか。
実際に欧米ではいま、アクティビストファンドブームが起こっている。彼らは市民権を得て、公的な資金が彼らに委託されている。そんな世界のトレンドとは逆行するのが、わが国であるように思えたことも書いています。
というわけで、これまで主張していることの繰り返しになることもあるのですが、よかったら読んでみてください!
NBO拝見しました。読者の投稿内容を見てもアクティビストファンドに対して批判的な内容が多いですね。
ベアドックさんの件に関しては、無能な経営陣の保身行為が司法の判断によって守られるというのが、私にとってどうしても理解できない。
今回はうまく行ったのかもしれませんが、こういった企業はまた他のファンドによって狙われる。(←そうあって欲しいし、過去日本にもそういう企業が存在する)
根本的な解決は、利益を上げる経営をすること。これに尽きる。
日本でのソースの代名詞とも言えるこの企業(=安定的な収益が望める)は、本来はもっと有望な企業なはずだ。
スティールは大きな問題提起を行ったはずなのだが、現状は実に残念な状況だ。
日本的経営 VS 欧米的経営(ほぼ米?)のように語る方もいるが、良い経営に東西は関係ない。むしろ、無能な経営を日本的経営という言葉を隠れ蓑にしている経営者はあまりにも日本を馬鹿にしている。
投稿情報: !!! | 2007年7 月31日 (火) 22:50
岩瀬様
記事拝見いたしました。仰るとおりだと思います。一点本論とは関係ないのですが、以下の部分(バリュエーションが割高)が理解できませんでした。詳細を教えて頂けないでしょうか? 他の国に比べて、PER、PBR、EV/EBITDA等の平均値が高いということでしょうか?
>今は当時と比べて市場ははるかに効率化し(日本の株式市場について言えばむしろバリュエーションは割高である)、
投稿情報: アクティビスト!? | 2007年7 月31日 (火) 12:17