大手保険代理店の社長が来社。意見交換していた中で印象的だったのが、インターネット経由の情報収集・比較検討・申込みが急速に増えている中、より多くの人が「どれが売れていますか」「他の人はどんなの買ってるんですか」と質問をし、ランキング上位の商品に人気が集中しているという傾向。
本来、豊富な情報が手に入ることで、型どおりではなく自分の好みに合った商品を選べるようになるのがインターネットの特徴だ。いわゆるロングテール。しかし、業界有数の規模であるこの方の話によれば、最近はこれに逆行する現象が進んでいるとのこと。
このようなことが起こっている背景にはもちろん、生命保険の商品選びが複雑であり(ボクはそうは思わないのだが、少なくともそう信じられており)、顧客が自ら自信を持って商品を選ぶことが容易でないという業態の特性もあろう。
しかしこれに加えて、いわゆる「横並び」意識が日本人の特質であるということを、改めて考えてみたい。
このことを意識したのは、留学中の修学旅行、いわゆるジャパン・トリップ。140名の学生を連れて日本を周ったが、彼らは驚くまでに集団行動ができない。時間通りに集まることはできないし、整列していても列はすぐにぐちゃぐちゃになる。そもそも、皆と同じ行動をするという行動様式に慣れていないのだろう。
これに対して、我々は幼稚園の頃から前習え!ときれいに整列することをカラダにも心にも叩き込まれている。列から少しでもずれることは許されない。身体テストでも、皆で一斉に台に上ったり下りたりするし。これが、我々が意識している以上に、もはや遺伝子的にインプラントされているのと近いレベルで、我々日本人の横並び意識を規定しているように思える(言いすぎ?)。
自分自身も、親の影響もあったのだろうが、人と違うことをとてもイヤがる子どもだった(今でもそうかも)。小学校1年生のとき、自分だけ一回り大きくて色が違う画板を持っていたのがイヤで、泣いたのを今でも克明に覚えている。
オトナになってからは、少しはましになったかな?以前、講演をしたときに「貴方は戦略コンサル、買収ファンドと人気職種ばかりを歩んできてミーハーだ」と大学生に言われたのだが、これにはちょっとだけ反論してしまう。
僕がBCGに入った1998年、あるいはリップルウッドに参画した2001年時点では、これらの職業は決して(今のような)人気ではなかった。BCGは同期入社3名で、東大法学部の学生では知らない人の方が多かったように記憶しているし、リップルウッドはまだ「ハゲタカ」と揶揄され、いい人材がなかなか集まらないのが悩みの種だった。
他方で、欧米の状況などは多少なりとも認識していたから、法学部を出てコンサル、ファンドというのが決して珍しくはないということも、選ぶ上での安心材料になっていたことは認めよう。この点では、横並び意識はいくばくかは改善されたが、本質的には直っていないともいえる。
先日、2歳の子どもが保育園で一人だけ機関車トーマスパンツをはいているということを聞かされた。他のみんなはアンパンマンパンツで、アンパンマンフリークの息子はえらく羨ましがっているとのこと。かわいそう!買ってあげようよ、そう妻に言うと、すぐに切り返された。
「そう言うと思った。買う必要なんか全然ない。人と違ってもいいんだよ、って教えてあげるいい機会じゃない。貴方って、本当に変わらないのね」
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Have a great weekend!
日本人の特徴がうかがい知れますね
投稿情報: 医療保険営業マン | 2008年5 月28日 (水) 14:18
いつも楽しく拝見しています。アメリカに留学していた頃、自分はユニークじゃないな、個性がないなとよく思っていました。ビジネスを学ぶ同級生はみな個性豊かでまわりもユニークな人たちを認める雰囲気がありましたね。ユニークなことの方がいいし、また目立った方がいい。
もっとも成熟した市場では、変化を起こし、Innovationすることが成長の基本原則で、ユニークなことの方が大事。Innovationこそが、成長の源泉ですね。日本もアメリカと変わりありませんね。
応援しています。
投稿情報: Yellow Jacket | 2007年7 月 2日 (月) 21:02
いつも拝見しています。アメリカで現地の小学校と幼稚園に子供が通っていますが、子供達の「しつけ」の方法が全く違っていて興味深いです。こちらから日本に帰国すると、日本の学校は「軍隊のようだ」と感じるようです。しかし、海外と比較して、日本であらゆる分野で一定以上のサービスが受けられる(およそ全ての人が、事務処理能力が高い)のは、この小さい頃からの集団生活への適応能力の鍛錬によるものという面もあるのかなあと思います。一概にどちらがどうとも言えないですねえ。
投稿情報: kmt | 2007年7 月 2日 (月) 12:58
社会学的には、キリスト教圏のような内発性に基づく行動がみられず、世間や常識といった外部的なものに盲目的に従って行動している傾向があるようですね。「場の空気」を読んで従うのが行動原理になっていると。
それが、そのまま経済的な判断にも影響してそうな気はします。
ただ、投資手法でインデックス投資とかありますけど、生命保険の場合は、そういうわけにはいかないんでしょうか?。実は、無難そうな保険、例えば規模が大きそうな共済系(の一番安い奴)で十分だよ、みたいな。あれこれ、合理的そうなタクサンもらえそうなことを考えてても、労力に見合った成果は出ず、結局、一番無難そうなナンタラ労災で十分なんじゃない、ってなことにはならないんでしょうか。
投稿情報: 金鉱マン | 2007年7 月 1日 (日) 11:36
素敵な奥様ですね!
いつも、ネット生保 立ち上げ日誌を楽しく拝見しております。私は、著者の方が、ハーバード留学記を連載していたときから、毎日欠かさず読んでいました。これからも、連載がんばってください。応援しています。
投稿情報: smile08 | 2007年7 月 1日 (日) 05:02
個人的には“横並び”に違和感を感じません。
こうした行動は、経済主体の合理的期待形成の一つのあり方として、標準的だと思います。
もしある人がより合理的な方法を知っていると確信できる場合に、オリジナルな行動を取る事も合理的だと思います。ですが、なにか特別に合理的な方法を知らないのであるならば、自分より合理的な方法を知っていそうな人の行動にあわせる、つまり“標準にあわせる”という行動が合理的なのではないかと思いました。
問題は、誰がより合理的な方法を知っているのか、という事かもしれないのですが。
投稿情報: henry | 2007年7 月 1日 (日) 04:08
最近の欧米の就職は、どんな職業が人気なのでしょう??
投稿情報: iine | 2007年7 月 1日 (日) 01:37
楽しく拝見しています。他の視点で見ると。日本は、世界でも最も所得の平等度が高い国であるが、少し格差が開いただけで、格差是正の大合唱が起きる。これに対して、欧米はもとより、中国はもともと、最も資本主義的な社会主義国といわれてきたし、他のアジア諸国は経済危機を経験して欧米的な資本主義を導入した。すなわち、日本は、アジア人も羨む「最後の社会主義国」であろう。
投稿情報: snowbees | 2007年6 月30日 (土) 06:33