以前、「金融市場は効率的だから、世の中には『おトク』という商品は存在しない。あるのは、(機能やリスクを付加したり取ったりすると、価格が上がったり下がったりするという)トレードオフだけだ」といった趣旨のことを書いた。それに対して、「金融市場は効率的だなんて、なんて非現実的なことを言うんだ」という反論をいくつか頂いた。この点について、追加で説明したい。
まず、マーケットは短期的には効率的でない(間違っている)ことが多い。ヘッジファンドなどはこの短期の非効率性を突いて、サヤを抜きに行っている。バフェットも、「マーケットが効率的だというファイナンスの学者は、(継続的に勝ち続けるファンドマネージャーもいるという)現実を直視していない」とよく言っている。この点は、理解しているつもりです。
ただ、彼らはいずれも、中長期的には市場は効率的である=本来あるべき株価に収斂していく、ということを信じている。ずっと非効率的なままだったら、買っても儲からないので。この点においては、市場の効率性を否定する人ですら、信じているわけだ。
また、この非効率性というのは、簡単に見つけられるものではない。ヘッジファンドのようなノウハウとスキルをもって死ぬ気で調査をするか、あるいはバフェットのような天才的な眼を持っていない限りは、見つからない。
したがって、我々一般消費者の立場からすると、「自分しか知らないおトクなことがある」と信じるより、「基本的には他の人々を出し抜くような『おトク商品』はない。自分が何か見落としているに違いない。むしろ、おトクと思った理由は何だろう?」と問い直すようにした方がいい。
よほどの情報量や分析力を持っている一部の人以外は、基本的には「金融マーケットは効率的である」という理解をしておく方が、失敗をしないように思う。そして、金融商品を選ぶ際には、先に述べたようなトレードオフの本質と、自分がそれぞれの項目についてどのようなpreferenceを持っているのかというものを理解した上で、意思決定をすべきではないかと思う。リターンが高い商品は、それに呼応して必ずリスクは高いのであるし、価格が安い商品は、その分必ず機能が少ないのである。
ちなみに、もう一つの重要なポイントは、「取引コストに注意せよ」であり、これはそれだけで一本のブログ記事が書けるほど、金融においては重要なテーマである。
こんばんは。
>ちなみに、もう一つの重要なポイントは、「取引コストに注意せよ」であり、これはそれだけで
>一本のブログ記事が書けるほど、金融においては重要なテーマである。
おっしゃる通りですね。
ただ「コスト」の概念も色々あるかと思います。
例えばその「(表面)コスト」をきちんと理解しアテンションを掛ける時間自体をコストと考える向きもあります。それならば取引コストが多少割り高でも(顔の見える)アドバイザーを求めるマーケットもあるでしょう。
すなわち「取引コスト」の中に「正しい判断をするための知識習得、情報収集のための自分の時間(時給)」を取り込むという概念とでも言いましょうか、つまりアディショナルコストを負担してもアウトソーシングしたほうが結局安いでしょ的な発想です。
また保険の場合には保険のコンテンツ同士でコストパフォーマンスを比較することより(おっしゃるとおり効率性が働いていれば無意味)、顧客と向き合い本来的な課題に関する的確な抽出とその課題自体が保険で解決すべき課題なのか否か(つまり実家の世話になったり、妻の労働力をアテにすべきか、貯蓄で準備するか、ファンド等で形成するか等々)を対話の中で導くことが重要なことに思ってます。→手前味噌(爆)
またこれらのことを理解できるマーケットこそが往々にしてビジネス的にはスイートなマーケットだと感じます。→これは多分合っている?(爆)
ただ、こと保険業界について言えばそれに見合うサービスを提供できるようなプロフェッショナルの数が少なすぎるって問題があるのも事実で、いっそネット経由で圧倒的に駆逐するというのもありかもしれませんねぇ。
そうなったらちょっと脅威ですけど。。。
ところ不払いが大きな問題になってますね。これも保険商品が複雑であるがゆえにマーケットサイドの完全な理解が困難という背景も手伝っていると思っていますが、ネットというチャネルだと契約者に対する「告知義務」の徹底や「支払(対象)範囲」の理解の徹底などいくつかの点においては対面よりも課題解決が少し難しいのかもしれないですね。(そうは言っても対面でスキルやモラルレベルが低い場合はサービスが均一化されず、時として重過失や故意の場合もあり得るので対面のほうがやっかいな問題なのかな・・・苦笑)
グダグダと色々書き込み、失礼しました。
○リコさんみたいなのだとちょっとがっかりなんでアッと言わせてくださいね~。
では、頑張ってください!
投稿情報: 通りすがりの外資生保 | 2007年4 月19日 (木) 23:14