New York Times が毎日出している Deal Book というメルマガは、M&Aや金融に関心がある人ならmust-subscribeのものだ。その日に起こった、M&A/I-Banking/PE/VC/IPOで興味深いニュースを、複数のニュース源へのリンクをまとめて配信してくれる。これを毎朝読んでいると、欧米の資本市場のダイナミズムを肌で感じることができる。
今朝の特報は、Hewlett Packard取締役会議長の指示による取締役の交信記録スパイ事件。水曜日にHPがSECにファイリングを提出したことによって、明るみに出た。特にNewsweekの記事が詳しくカバーしている。
いわく、昨年名物女性CEOだったカーリー・フィオリーナが解任されるのに伴う取締役会内での議論が数度に渡ってメディアにリークされたが、それに業を煮やした取締役会議長(これも女性)が外部のプロに依頼して、通信記録を調査し、そこからリークした取締役を割り出したというもの。この取締役に名指しで解任要求を求めた取締役会にて、その調査方法に猛烈に抗議したのが、伝説的なVCであるクライナー・パーキンズの代表パートナーであるパーキンズ氏(ちなみに、この方もHBS卒業生)。彼がその場で辞任し、今回の事件を公表することを求めていたところ、ようやく明るみに出たわけだ。
今回は「盗聴」が行なわれたわけではないが、電話会社に身元を偽ってアカウント情報を聞き出す業者に手配て、個々人の通信記録を入手。交信パターンから、メディア関係者と話していた人間を割り出したとのこと。会社からの交信のみならず、個人の携帯電話などの通話なども含まれていたというから、気味が悪い。パーキンズ氏は本件について公にすることを求めていたが、退任の際に「明確に紙面にて退任理由を述べていなかったっため、SECファイリングは必要とない」との説明でつっぱねられていたそうだ。
このニュースを読んで、いくつかのことを感じた。
一つは、ボード(取締役会)内で取締役相互の牽制が働いている実態。もちろん違法性がありそうな今回の行為は許されないが、結果を出していないCEOを取締役会が解任できるというガバナンスのストラクチャーは、それ自体学ぶものがある。
そして、今回の一連の流れに代表される米国のディスクロージャーのあり方は学ぶべきと思った。今回のようなことが起きると、きちんとした調査委員会が設置され、正式な調査結果を公表することが求められる。日本であればまずは隠蔽、あるいは週刊誌で噂話として流れ、形ばかりの調査委員会が設置されても形式的なもので終わってしまう。この点、米国のこの手の調査報告書はフィクションもびっくり、かなり読み応えがあるものが出てくることが多い。そして、誰もがインターネットで入手できる。もちろん、HPもずっと隠蔽してきたのだが、この手の開示をSECが求めるというところが素晴らしい。
このように、自分たちに不利となる情報も含めて、オープンにして議論できる環境があることは、米国のよい点であると思う。我々も今回の一連のプロセスから、学べることは少なくない。
恥ずかしながら、そのようなMailingリストがあるとは知りませんでした。ためしにSubscribeしてみます。
投稿情報: shim | 2006年9 月12日 (火) 15:03