最近になって、大学生と話をする機会が増えた。まだ1年とか2年なのに、コンサルになりたいとか、HBSに行きたいとか言っているのを聞くと、「何かが違うのでは?」と違和感を覚える。学生の頃からビジネスプランとかコンサル・投資銀行面接特訓とかやっている人の話を聞いても同じ(僕のブログなり本を読む人たちだから、自然とそういう人たちが集まってくるのだろうが)
学生時代というのは、長い人生で2度と来ない貴重な時間だ。何の責任を背負うこともなく、誰に急かされることもなく、ただ思うままに自分の関心があることに没頭できる。時間はゆっくり流れているし、何にでもチャレンジできる。無駄なような時間の中から、自分の中に何かが深く刻み込まれていく。いや、むしろ、それは無駄であることそれ自体に意味があるように思える。
自分自身、学生時代にもっと色々なことをやっておくべきだったなぁ、と思うことがある。それでも、まぁジャズ研の仲間と酒を飲み、楽器をいじりながら過ごしたゆったりとした日々や、駒場の近くで酒を飲みながら「何のために生きるのか?」といった議論を交わしたことは、いま思い出しても自分の中でとても大切な位置を占めている。
学生時代に「色々やっておくべき」と考えることは、仕事ともっとも遠いことであるべきだ。学生の頃に就職後のことに時間を費やすほど、もったいない過ごし方はないと思う。仕事のことをかじったとしても、実務に出ればせいぜい1ヶ月くらいで学べることがほとんど。そこからは数10年間、嫌でもずっと仕事をしていくのだから。なぜこの貴重な時間を、今しかできないことに費やさないのか?
僕は採用側だったとしても、面接をして一番聞きたくない話は、ビジネスの話だろう。それよりもその人がどんなことをやってきて、どんな生き方をしてきて、どんなユニークな個性を持っているのか、それを知りたい。僕がやったことがないことをたくさんやってきて、知らない世界を知っている人の方が、よほど魅力的に感じる。
最初は、「就職活動がここまで若年化しているのか?」と思ったのだが、聞いていてだんだん、「子供の頃からやってる受験戦争をいつまでも辞められないのでは?」と思うようになった。レールに敷かれた人生に乗ることを辞められず、進学校に行って、一流大学に行って、世間でカッコいいと思われているような企業への就職を目指しているのではないか。
僕は30歳になって3社を経て、留学を経て、ようやくちょっとだけ自分がどんな仕事をやりたいか、どんな仕事に向いているのか、分かってきたような気がする。なのに、20歳の時点で、「僕はコンサルタントに向いている」とか、「投資銀行でバリバリやるのがベストな選択」と、どうしていえるのだろう?
夢や目標を持つのは大切なことだけど、それは手が届かないほど大きな、何10年も先のことであるべきだ。目先の小さな目標ばかりしか見ていないと、中長期に渡って大切になってくる資質である、「魅力的な人間」にはなれないように思う。自分自身の反省の意も込めて、そんなことを自分よりも若い人たちに伝えられたら、と思う。若いうちは、無駄な時間を過ごせ、と。
MAJORさん
MAJORさんが真剣に人生について考えているということは本当によくわかります。
僕も学生時代は、MAJORさんと同じような学生でしたよ。
何がしたいか、どこに就職するべきか、必死に考えていました。
そしてその結果、僕は弁護士になった。
でも、もうすぐ弁護士を廃業してベンチャーを起こします。
僕が本当に好きなことは、アドバイザーでなくプレイヤーとしてでないとできない、
しかも小さい組織で自分がリーダーシップを取らないとできない、と悟ったから。
なにが言いたいのかというと・・・
第一に、自分が思っている以上に自分のことは自分ではわからないということ。
第二に、仕事ってのは最低数年間はやってみないと絶対にわからないということ。
学生が必死こいて外から眺めていたって絶対にわからない。
第三に、最初の就職先が人生を固定化するものではないということ。
転職・独立・・可能性はいくらでもある。
第四に、仕事は自己実現の手段であって、自己実現の目的ではないということ。
だからこそ、まずは自分をとにかく広く深く耕してほしい。
そのために、一見無駄とも思える経験を学生時代にたくさんしてほしい。
はっきり言って、いまMAJORさんの見えている世界は、まだまだとても狭い。
まずは視野を広げる、それで十分じゃないかと思います。
自由に視野を広げることは、学生にしかできない特権だよ。
投稿情報: R | 2006年12 月21日 (木) 14:57
MAJORさん
このブログで彼が言いたかったこと(のうちの一部)は『大学時代(=就職前)は(就職にはさしあたり)どーでもいいことでもいっぱい時間を費やし、悩んだほうがいい』ということかと思っています。
きっと、アメリカにいる時間が全て就職のためではなくて、クラスメートと遊んでいるときも、お酒を飲んでいるときもあるはず。
そういう時間のほうが、ふとしたときに大切に思えるときが来ると。もしそういう時間がなくて仕事100%だとすると(厳密に言えば、100っていう人はいないのでしょうけど)、自分の中でバランスが崩れたときに回復できないよってことなのかなと解釈しています。
daisukeさんは、「HBSで人生とは、幸福とは何かについてよく議論したし考えた」と喋っていました。(結局自分のバランスは基本自分で舵を取っていくものですからね)
まずは今自分自身が納得できる留学生活を!!!
投稿情報: まつだじゅにあ | 2006年12 月17日 (日) 10:53
あなたが信じる道を頑張って下さいね!!
ただ社会にも出てない私が言うのも何かと思いますがゴールはいい会社に入ることだけではないと言う価値観があるのも頭に入れておいたほうがいいと思います。
そこからが本当の社会人のスタートだと思うからです!!人生の選択が間違っていたかあっているかは死ぬ時に分かると私は考えています。その就職先を生かすも殺すも自分次第!!努力次第で運命や未来は変えれるはずです。
きっとそういう風に悩んで考えているあなたならできると思います。人間の一生の時間は限られているので人間性を高める努力と将来のやりたい事に対する努力の時間のバランスを保ちながら幸せな人生を送って下さいね!!
MAJORさんの健闘を心から願っています。
投稿情報: CAT | 2006年12 月16日 (土) 13:28
Rさん、CATさん、ご意見を頂きありがとうございます。
私が大学入学以来常に、卒業後の目標として考えてきたことは、就きたい仕事に就く、というシンプルなものです。そうなるためには今どうすればいいのか、と逆算的に考えてきた結果が今の状態です。ですから、どこに何のために就職するのか、何がやりたいことなのかは常に自問してきたつもりです。CATさんに仰っていただいたように、冷静に自分にとって何が重要かを考え、実行していきたいと思います。
投稿情報: major | 2006年12 月16日 (土) 12:04
MAJORさん
私はただの大学4回生です。多くの先輩方は「若いうちに様々な経験をしなさい!!遊びなさい」とおっしゃいます。ただ・・それは岩瀬さんを含めその方達が、その歳になって気付いた事!!つまり、その方達は遊んでないからそう思うのです。おもいっきり遊んでいたならもしかしたら、また人生が違っていたかもしれない!!(経験は人間性を深めるので大事だとは思いますが・・)
だから私は思うのです!!あなたが今最も重要だと思う事に取り組むのが1番だと思います。おそらくどの選択をしても後悔は残るでしょう!!ただ自分が1番正しいと思う道を進めば、自分自身満足するし、後悔は少ないはずです。
あなたが幸せだと思う人生を送ってください!!
投稿情報: CAT | 2006年12 月16日 (土) 11:26
今回のエントリー、大変考えさせられました。
私自身も現在学生であり、(就職は決まっていますが)もてあます時間の中で日々キャリアや生き方について考えています。
好きなことをするために生きるというのは当たり前のようで、それを前提と出来るのはかなり恵まれた環境であるように思います。
社会的なイデオロギーとキャリア形成や人生観が密接に関わっている事を考えると、岩瀬さんが危惧するような現状を作り出している原因のひとつは、他ならぬ資本主義だったりするのではないのでしょうか。
その意味では、私はHBSというところは外生的なイデオロギーに自己のprincipleを以って立ち向かう術を学ぶところだと思っていたので、先日発売された本のサブタイトルが少し引っかかったりしていました。
投稿情報: joe | 2006年12 月15日 (金) 20:36
人生、なんのために生きるのかなあ。
好きなことをするためでしょう?
たとえ一流企業の社長になったとしても、それが好きなことじゃなければ、周りか見ても、自分自身も、ちっとも幸せではないと思うよ。
就職のことを相当気にされているみたいだけど、どこに何のために就職するのか、真剣に考えてからのほうがいいと思うよ。
僕は岩瀬氏の今日のブログに心の底から同意する。
ただ、岩瀬氏の言っていることは当然理想論的部分もあるけどね。
氏自身、学生時代のそれなりの部分を司法試験(という卒業後の仕事に直結する作業)に費やしていたわけだから。
無論、岩瀬氏ほどの英才であれば、比較的短時間で済んだのだろうけれども。
投稿情報: R | 2006年12 月15日 (金) 16:44
岩瀬様
いつも楽しく読ませていただいています。
私は現在日本の大学からの派遣で、アメリカの大学へ通っております。私の場合、現在の派遣プラグラムへの参加自体が就職活動を睨んでのことでした。就職先として興味を持っている業界が非常にcompetitiveなのですが、私の大学(日本での)はいわゆる一流校ではありません。そこで就職活動に向けた戦略の一つが現在の留学でした。こちらへ来てからも、なにかと就職活動時に有利になることをしようというという視点での活動をしてしまいがちです。その結果ゆったりとした時間を取ることが難しいという状況です。岩瀬様が仰るように、学生時代にしかできないことももっとやりたいですし、就職活動を意識した活動ばかりの人物が魅力的になり難いのではないか、というご主張にも賛同できます。ただ現状では他に方法が無いと感じています。このようなバランスをどのようにお考えになられますでしょうか?
投稿情報: major | 2006年12 月15日 (金) 02:19