生命保険会社が破たんした場合、保険契約はどうなるのか?大切なことだけれど、答えを知っている方は意外と少ないのでは。
生命保険業界には、国内で事業を行うすべての生命保険会社が加入している「生命保険契約者保護機構」(以下、「保護機構」)なる団体がある。保護機構がHP上に掲載しているパンフレット、およびQ&Aは非常に分かりやすいので、ぜひ一読頂きたい。
保険会社が破たんした場合、契約は基本的には保護機構によって保護されることになっている。新しいスポンサーに引き継がれる際の資金援助を行うか、保護機構自身が契約を引き継ぐ。
もっとも、この「保護」の内容だが、(一部の例外を除いて)「責任準備金の90%を補償」ということになっており、このルールのもとでは、貯蓄性の高い保険商品については、保険金(≠責任準備金)などは50%~90%くらいカットされる可能性がある。
以下、出口の「生命保険入門」より:
保護機構は、すべての生命保険契約を対象に破綻時の責任準備金(保障額ではない)の90%までを補償する。より正確に述べれば、保護機構は破たん会社の責任準備金を全期チルメル式、すなわち最も低い積立方式に洗い替えた上で、その90%までを補償するのである。
したがって、現在、ほとんどの生命保険会社は純保式で責任準備金の積立を行っているので、契約者の実質的な負担は10%を超えることになる。
しかも、破綻後は契約条件の変更が行われ、予定利率が引き下げられるので、現実の保障額は、図9-2のように90%以下になることを覚悟しておく必要がある(さらに解約控除も課せられる)。商品にもよるが、変更後の予定利率の設定如何によっては、契約時の保障額(保険金額)が当初の半分以下となる可能性も捨てきれないだろう。(強調は岩瀬)
これに対して、いわゆる「かけ捨て」の定期保険については、相対的にその削減額が小さい。以下は、保護機構のHPより(「Q&A」のQ16ご参照):
Q16: 過去の破綻事例においては、保険種類によって、保険金額の減少幅が異なったと聞いています。なぜ、保険種類によって異なるのか、もう少し詳しく教えてください。
A: 保険種類によって、責任準備金等の削減や予定利率の引下げ等、保険料の算定基礎となる基礎率の変更の影響が異なるため、保険金額の減少幅が異なります。養老保険、終身保険、個人年金保険等、貯蓄性の高い保険の場合、将来の保険金等の支払に備えた責任準備金の積立額が比較的大きいため、責任準備金等の削減や、責任準備金の積立利率に相当する予定利率の引下げの影響が大きく、一般に保険金額の減少幅も大きくなる傾向があります。
一方、定期保険等の保障性の高い保険(掛け捨て型の保険)の場合、もともと責任準備金の額が少ないため(契約終了時にはゼロとなります)、責任準備金等の削減や予定利率の引下げの影響が比較的軽微で、一般に保険金額の減少幅も小さくなる(または減少しない)傾向があります。(強調は岩瀬)
というわけで、現在のような資産運用リスクが読み切れないご時世においては、保険はかけ捨てに絞っておいたほうが、保険会社の資産運用リスクにさらされる割合は小さい(そのリスクが自分に移転されているわけだが)。
破たんした場合に契約を継続するか、解約するかの選択は、一概にどちらがいいかは言えない。同じく保護機構HPには、以下のように説明されている(同Q27):
Q27: 破綻保険会社の契約を継続する場合と、解約して加入し直すのとでは、どちらが有利ですか。
A: 加入し直す場合と比較してどちらが有利かといったことは、一概にはいえません。ただし、新たな保険に申込まれても、年齢や健康状態等によっては、加入できないこともあります。また、解約される場合には、早期解約控除制度が適用され、解約返戻金等が削減される可能性がありますので、注意が必要です。
こういうご時世ですので、ご自身が入られている大切な保険については、きちんと理解されておくことが大切だと思います。保険証券を取り出して、再度内容を確認してみてください!
それでは、よい週末をお過ごしください!週末は、FPフェア2008にブースを出展します。
(追伸)
なお、本日当社の商品ページがリニューアルされましたので、よかったらご覧ください
死差益・・・確かにブラックボックスだし、すごく耳あたりのワルイ言葉ですね。まあ一見旨みがありそうに見える利率の穴埋めと、選択効果っていう企業努力?の賜物なんですけどね。まあ相互会社は比較的?契約者配当してるからいいんじゃないですか。どこぞのセイホのなんとかロイヤルティーとかマジで目が点ですよ(爆)
というか3利源分析ってのがそもそも意味ないんですけどね。「儲けの源泉を明らかにして公衆の好奇心にさらされよ!」って高額納税者の長者番付かっつうの(爆)
横道にそれましたが、やっぱ保険はもっとマトモな金融商品にならなきゃダメです。まあ昨今誰もCDSに責準積んでなかった時点で保証なんてどうせはじけやしない胴元ウハウハの打ち出の小槌だぜ!なんて金融関係者皆思ってたんだろうけど(爆)猛省しなきゃ。
まあ保険は保障、この原点に立ち返り業界全体で適正価格を形成していってほしいですね。
投稿情報: Chiquitita | 2008年10 月14日 (火) 00:02
利差損を死差益でカバーするって話がでてきたので、前から思っていることをチョット…。そもそも死差益って、保険会社の利益にして良いものだろうか?保険会社が集まって作り上げた生命表に基づいて、確率的にその集団は10%死ぬだろうから、みんなから10万円づつ貰っておいて、死んだ人には100万円あげようとしたが、実際には8%しか死ななかったから2%分、お金が余った…だから、これを儲けにしちゃおう!って、なんか変な感じがしません?メーカーが努力して生産性を高めて製造原価を低減させて、利益を上げるのと、予想したほど死ななかったから儲かったっていうのは全然違うと思う。むしろ、保険会社の製品は「保険金」とするなら、保険金が予定より払えなかったのは、製品が売れなかったから…と考えるべき…。自分の会社の製品が売れなくて(=保険金を支払わなくて)喜ぶ会社は、世の中で保険会社くらいじゃないだろうか…。保険会社の社名の後ろに「相互会社」って付いているところが多きけど、この「相互」って、「相互扶助」ってことですよね。つまり、助け合い、思いやりで保険会社ができたはずなのに、保険金の支払いが少なかったから利益(死差益)が出たと考える保険会社の社名に「相互会社」なんて付けてほしくないと思う次第です。
投稿情報: sugiyamahayato | 2008年10 月13日 (月) 18:06
保険は保障、まさにそのとおりですね。通常の保険会社はその預ったお金を金庫に入れる代わりに超長期国債などに充てていて、その国債利率が予定利率を常に上回ったら(そんなことには残念ながらならないんですけどね)、かつデュレーションがマッチしたら早い話利益確定なわけです。まあ現実は利率の損を死差益でカバーしてるんですけどね。費差益は・・・まあ高いか安いか別にして、そこを外す会社はまずないでしょう。
かかる観点から言うと、セイホは潰れずに淡々と保険金を支払うことが肝なんですな。斡旋屋に多く持ってかれるのにバクチを打つなんざ100年早いんです(爆)。蛇足ですがセールスマンもいかに辞めさせないかが利益でもコンプラでも肝であるわけです。
しかし国債利率と心中せざるを得ないセイホとしてはJPYはホントに魅力ないはずで、昨今の外貨建てブームがその反動だったと思うんだけど、消去法でJPYだけ残っちゃった日にはいったいどうしたらいいのか、マチコ困っちゃう~って皆思ってることでしょう(爆)
投稿情報: Chiquitita | 2008年10 月13日 (月) 00:54
保険会社の破たんのニュースを聞くたびに思うんですが、「保険」って何?って思うんですよ…。僕は「保険は保障」と思っているので、なぜ、保障を請け負っている会社が、株や為替の影響で破綻してしまうんでしょうか? 保険=保障ならば、個々人の危険の確率を導いて、そこに安全率と付加掛金を上乗せして保険料を算出し徴収している限り、極端な話、その徴収した掛金を金庫の中に現金のまましまっておけば、為替が上下しようが、株価が取得価格から大きく下落しようが、約束した保障は絶対にできるはず…なのに…債務超過って…そう考えると、保険会社は保障だけでないことをやっているからこうなってしまったと言えるんでしょうね! やっぱり保険会社の使命は保障なんじゃないでしょうか!保険会社は「安心」を売っているんですから、「消費者を不安にする」ようなことはやっぱり止めてほしいですね。 保障オンリーのライフネット生命の躍進を期待します。
投稿情報: sugiyamahayato | 2008年10 月12日 (日) 17:58