最近、音楽を聴いてなかった。
夜中、自宅のリビングで布団にくるまって、二人のピアニストの対話と演奏によってなるCDを、静かに聴いた。一人は、この当時80歳近い女性。もう一人は、26歳の新進気鋭の男性。外からは、雨の中を走る車の音が、時折聞こえてくる。
祖母と孫のような関係の二人だが、お互いのジャズ観、好きなピアニスト、共演したミュージシャン、好きなスタンダード曲についての話を聞きながら、かわるがわる、そしてデュエットで、バラード、アップテンポの曲、そしてブルーズを弾くのを聴いていると、まるで美術館でアーティスト自身から作品の説明を聞きながら鑑賞できるように、音楽がどうやって作られていくのかを深く理解できるような気がする。
録音は、1996年。女性は、Marian McPartland。いまは90歳近く、なお健在。留学中、ニューポートジャズフェスティバルを見に行ったときに、そのときもグランドピアノ2台を向かい合うように並べて、若手女性ピアニストと一緒に弾いていた。
男性は、Brad Mehldau。当時まだ26歳の彼は、話を聞いているととても大人びている。いつもは演奏ばかりを聴いているが、その背景にある考えや想いを聞くのは興味深い。
途中、心が温まる話があった。Mehldauの両親は若いころ、ほとんどジャズを聴きに行かなかったらしいのだが、たまたまデートで聞きに行ったのが、Marian McPartlandのライブだったそうだ!何たる偶然。「ワタシのライブを聴きに来たカップルは、たいてい結婚してるわよ」とのこと。
二人の演奏家が、真剣にぶつかり合う。26歳の男性と80歳近い女性が「対決」するなんて、スポーツだったら考えられないのだが、それをお互いが楽しんでいて、最後に即興で作られたA♭のブルースの曲を終えて、笑いの声が録音されていた。
なんか、最近、生活に「潤い」が足りないなぁ、どこかで思っていたのだが、音楽が、ジャズが足りなかったのだった。時計の針は2時近かったが、体内に瑞々しいものを得ることができた気がした。
* CD はこれです
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