出先で立ち寄った丸の内オアゾで山積みになっていた本が、オフィスに戻ったら机に届いていた。保田隆明氏の近著「企業ファイナンス入門講座」。
英語とコーポレートファイナンス。これらは、現代資本主義の文字通り共通言語であり、国際的な仕事をするプロフェッショナルにとっては、もはや「基礎中の基礎」とも言えるスキルとなっている。
ファイナンスについてはさまざまな本が出ているが、本書が特徴的なのは、
- 東京/NYの投資銀行で活躍していた保田氏の臨場感あふれる体験をもとに、
- 難しいことをやわらかく・センスよく説明する独自のセンスをもって、
- 株主価値/企業価値の算出方法からM&Aの交渉現場、配当/自社株買いやIR戦略、さらにはベンチャーファイナンスまで(投資銀行とベンチャー/VCの双方を体験しているのも著者の特徴)、実務で重要となる幅広いテーマをカバーしている
極めて野心的な作品である。
書こうと思えばいくらでも専門的/技術的、そして面白くない読み物となりうるこれらのテーマを、できるだけ軽く・楽しく・分かりやすく、それでいて本質的なメッセージを落とさずに綴っているのも、非常に魅力である。300ページを超える分厚い本だが、サラサラ読めるので苦にならないはず。
ちょっと気が早いかも知れないが、個人的には本書に続く「応用講座」にも期待したい。本書でもある程度触れているが、グローバルな投資ファンドなどとの対話を迫られる日本の経営者、ビジネスプロフェッショナルが彼らと同じ土俵で対話をしていくためには、さらに一歩進んで
- よりキャッシュフロー重視の利回りの考え方(例えば、PERよりもキャッシュベースで調整した純利益やfree cash flow yieldなどで見ること)
- 資本構成と資本コストの重要性(例えば、昨今のTCIがJパワーに要求している施策がファイナンス的に、そして自社にとってどのような意味を持つか?)
をもっともっと深く、徹底して肌感覚で捉えられるように、重点的に綴ったものを書いてほしい。
いずれにせよ、MBAで学ぶよりももっと実践的なファイナンスの教科書を探している人には、本書はよい座右の書となると思います。2年越しというこの力作には、最大限の敬意を表したいと思います!本当に、お疲れ様でしたー。
そう 大和証券銀座ビルのパネルで保田さんをみて、帰りの丸善オアゾで本の山をみて 街中で保田さんの顔をよく見る1日でした。著書によると大学院にいかれるそうなのでその成果の新刊をたのしみにしています。
投稿情報: ちょうファン | 2008年3 月 6日 (木) 23:33