11月も下旬にさしかかり、すっかり肌寒くなった。お昼の時間になり、「前から気になっている店がある」という一人の掛け声のもとに、5名で近所の和食屋に出かけた。お昼は15食限定、千円。11時50分くらいに到着すると、「12時開店です」と言われたので外に出て、寒い中、ワクワクしながら待った。
ようやく中にはいって、お昼の定食を頂く。若くて有名料理店の料理長を務めたというシェフが作るご飯は美味しい。「夜はまだ知られていないので、あまりお客さん入っていないんですよ~」とおかみさんは話していた。しかし、味がどれだけよくても、この店はなかなか人気が出ないだろうな、と思ってしまった。
まずは、お店の中の雰囲気。縦に細長い空間に、カウンターで横一列に11席。奥に行くと、少し狭い感じがする。そして、音楽の選曲。モーツァルトの交響曲だそうなのだが、壮大なスケールだが運動会のような慌ただしさを感じさせた。
加えて、女将さんの対応。愛層は悪くないのだが、決してよくもない。端っこからご飯をついでいたので、「回しましょうか」とこちらから声をかけたのだが、ご飯もおみそ汁も、一番上流にいると8個も回すことになり、お昼からバケツリレーでもやっている気分。そして、お店からの注文の多さ。「千円はおつりがないようにしてください」「夜は1万円のコースのみ」。気持はわかるのだが、はじめてのお店にしては、少し融通が利かないかな、そう思ってしまった。
改めて考えたのは、当り前のことなのだが、料理屋でいい時間を過ごすに当たって、「味」は全体のほんの一部に過ぎないということだ。個人的には味は気に入ったし、クイックランチにはまた訪れようと思うが、夜に人を連れてゆっくり食事をしに来ようとは思わない。空間やサービス、雰囲気を含めて、トータルでのブランド体験をどのように作り上げるかが重要なのだ。
考えてみれば、生命保険だって一つの消費者向け商品サービスなのだから、同じなのだろう。それは単一の商品の「美味しさ=機能」に留まることなく、入口から出口まで、お客さまが望むようなサービスを行い、トータルの顧客満足度を作っていかなければならないのである。「ネットで生保」は対面型の営業と比べてコスト削減ができることが特徴になるはずなのだが、それはお客さまから見たときにはほんの一つの効用でしかなく、もっとホリスティックにみたユーザー体験を丁寧に作り上げなければならないということを、ランチ体験から考えさせられた。
言うは易し、行うは難しなのですけど、ね。
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