業界紙「インシュアランス」4月19日号(木)。生保労連がまとめた『銀行等による保険販売に関わる「問題事例収集活動」・・・』を、興味深く読んだ。
銀行で保険加入ができるようになることそれ自体は、顧客にとっては選択肢が拡がる、望ましいことである。しかし、銀行の現場では積極的な営業行為の結果、不適切な募集行為を行っている事例がみられ、本調査結果はその難しさを物語っている。
平成18年1月~11月末まで、3,394件の問題事例を収集。分類は、以下の5つ:
A. 圧力販売事例 (1,032件、30.4%)
⇒ 銀行が融資相手の法人に対して、保険加入の圧力をかける事例(具体例)
『融資を受けている銀行から「付き合ってほしい」と言われ、その際、融資担当課長と支店長が何度も変額年金の加入推奨をしてきて、断れなかった』
B. 顧客データ流用事例 (1,313件、38.7%)
⇒ 定期が満期を迎えるなど、口座に資金が入ったことを知って、直ちに保険
の営業行為をかける事例(具体例)
『死亡保険金が着金し、弊社後継契約の保険料振込み手続きのため、銀行にお客様が行ったところ、銀行員から「このお金は何に使うのか。保険なら投稿にも同様の商品を扱っているのでどうか」と勧められたとのこと』
C. 募集指針違反等、不適切な募集事例 (685件、20.2%)
⇒ 元本保証がない変額年金などの商品を、そのリスクを説明せずに
販売する事例(具体例)
『お客様は、銀行で銀行員に預金通帳内容を確認され、「利回りのよい商品があるのでこのままではもったいない」との募集話法のもと、銀行商品だと思い契約したとのこと。後日「保険証券」が送られてきて大変驚いたとのこと』
D. 銀行系保険代理店による迂回販売事例 (313件、9.2%)
⇒ 銀行の系列保険代理店を通じて、実質的にA~C違反の行為を行うこと。
(具体例)
『個人病院を経営するお客様は、病院新設の際、融資を受ける条件として、融資を受ける銀行の系列保険会社から定期保険加入を強要され、断れず加入したとのこと』
E. その他 (51件、1.5%)
生保労連は銀行窓販に抵抗する最大の勢力と思われるので、このような事例を積極的に集めるインセンティブがあり、いい意味でけん制が働いているように思った。他方で、銀行からしてみると、顧客の資産状況に関するデータを活用して、より顧客にあった金融商品を提案すること(=「アップセル/クロスセル」)自体は自然な営業行為と思ってしまうかも知れない。グループ会社がいたら、当然彼らの強みも活かしたい(それが「シナジー」)と思うことも同様。
しかし、保険については業法の厳しい網がかかっており、保険を取り扱う以上はその趣旨や目的はよく理解しなければならない。いずれにせよ、本質的な課題は売る側の規制というよりは、買う側の理解を高める啓蒙活動にかかっている。買う前には必ず、当該商品のリスクと期待リターンを理解しようよ。分かるまで、恥ずかしがらずに聞こう。そんなことを考えさせられた、業界紙の一本の記事だった。
いつも楽しく読ませていただいております。 最近、やっと事業関連の話が増えてきましたね。 さて、私も初めてこのブログを見たときは「ネット生保」というのには、「何を今更。。コーデコミュで修行しなさい」って感じで苦笑してしまいました。
ただ、エントリーを読んでいくと「ネット生保」というのは、あえてシニカルに名乗っているだけで、何か異なるアイデアがあるはずだと期待しております。
いずれにしろ日本の金融業会、特に生保業界はN生命と財務省を中心とした素晴らしいムラ社会ですので、風穴を空けることは決して不可能ではありませんが、コツコツと実績とお上の理解を求める時間のかかる地味な作業となると思います。
決してケーススタディでやったようなドラスティックな展開はありえませんが、決してあきらめずに、正しいことを地味に続けることが肝要です。巷のMBAホルダーの起業を何度も投資家サイドで見てきましたが、ことごとく失敗の原因は、ここに起因していると思っております。
若い優秀な青年の試みに期待しながら、2-3年で放り投げ、B2Cになることだけないように祈りながら応援しております。
投稿情報: 通りすがりのキャピタリスト | 2007年4 月13日 (金) 10:16
保険の売り手の法令遵守は、かなりクローズアップしていますが、管理人さんがおっしゃるとおり、消費者(契約者)の啓蒙活動が今後必要になってくると思います。
好き・嫌いで選択する消費者であるにもかかわらず、なぜ保険に関しては悪から入り、受け入れない体質ができているのか疑問です。
歴史から考えれば当然ですが、。。
悪を払拭するマクロ的な展開できれば、ネット生保は成功するのではないでしょうか。(私見です)
投稿情報: 保険のはてな | 2007年4 月13日 (金) 01:29