最近お会いした日経の編集委員の方が本ブログを見て下さっており、アンケートにもご協力いただいたにもかかわらず、こんなことを書いてしまうのは恐縮なのですが・・・
New York Times, Financial Times, Wall Street Journal に比べて日本の新聞ってつまらないと思う。欧米のquality paper の場合、分析記事が非常に充実しており、業界人が読んでもよく書けているものが多い。エコノミストや金融界出身(シンクタンクではなく、実際にプレイヤーだった人)のジャーナリストも少なくないし。これに対して、日本の新聞は基本的にファクツの伝達にとどまる。あまり意見があるように感じられない。ウェブページでヘッドラインを読むのと、ほとんど変わらない。特集記事のようなものも、大体知られていることをインタビューなどで裏付けたに過ぎず、「へえー」とうならされる取材に基づくものは稀。海外から帰ってきて日経だけ読んでいると、なんだか息が詰まりそうな狭い世界に閉じ込められる感覚を覚える(←なら海外の新聞をちゃんと読め)。
(ちなみに、僕は2001年9月11日にニューヨークにいたが、翌朝のNY Timesのテロの分析は数10ページにも及び、政治・経済・社会・宗教・建築・技術、あらゆる面から深い分析がなされていたのには驚嘆した覚えがある。)
そんなグチばかり言っていたのだが、今朝、最近のなかではもっとも面白い記事を日経で読んだ。一番裏にある文化面。歌舞伎に魅せられた英国人が、公演中に「成田屋!」など役者の屋号を叫ぶ「大向こうさん」をはじめたという記事。早朝の千代田線のなかで、読みながらニヤニヤしちゃった。
以下、引用。「私はなんと四度目の歌舞伎体験で大胆にも声をかけ、かつてない快感を味わった。
以来やみつきになって、週に二度通い出し、家族にあきられるほどだった。当初は他の大向こうさんたちの掛け声に追随した。ある時、歌舞伎座でポンと肩を叩かれて振り返ると、老紳士が「上手ですね」とニコニコ顔。三階に陣取る森さんという大向こうさんだった。」
今回のロンドン公演では、幕開けと同時に「待ってましたよ延寿太夫!」と叫んだそうだ。英国紳士がこんなことをやっているなんて、想像しただけで、なんだか楽しい。
屋号を叫ぶタイミングは、たいていなんらかの「型」が決まったときだ。それは、その演技の中での一つの見せ場であり、歌舞伎ならではの様式美のハイライト。似たようなものは、例えば文楽でもあるし、あるいはジャズでも存在する。これらは「おやくそく」であるのだが、聴衆はどこかでそのタイミングを待ち望んでいて、決まった瞬間はなんともいえない快楽。その感覚自体は、東西を問わず存在するのね。ちなみに、歌舞伎は9月23日にチケット取ってあった。
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